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「生きづらさ」を抱えた人の避難所は自然につくられていく――光武克の「発達障害BARにようこそ」

― 光武克の「発達障害BARにようこそ」第5回 ―

東京・渋谷にある発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」。ここは、マスター以下スタッフのほぼ全員が“発達障害の当事者”であるバーです。当店には毎晩、僕らと同じように発達障害の悩みを抱えたお客さんたちが数多くいらっしゃいます。そんな生きづらさを抱えた方たちが少しだけ羽を休めに立ち寄るバーの日常を、僕、マスターの光武克(みつたけ・すぐる)がご紹介します。

====【発達障害とは?】====
■自分の世界に閉じこもりがちな「自閉症スペクトラム症」(ASD)
■注意欠陥と衝動性が強い「多動性注意欠陥障害」(ADHD)
■特定分野(計算だけ異常にできないなど)の理解が困難な「学習障害」(LD)
上記の3種類が一般的に知られている。発達障害者はそれぞれ複雑な“特性”を抱えそれによって日常生活において、さまざまな支障が出る人も多い。
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「光武さん!」

 以前、この連載にも一度登場してくれた常連客の森永さんの明るい声が店内に響き渡ります。

光武「あっ、森永さんじゃないですか。今週もいらっしゃったんですね。年が明けてから皆勤じゃないですか(笑)。いつもご来店ありがとうございます」
森永「いやー、光武さんに会わないと、なんかブラッツに来た気がしないんだよね」
光武「ははは、そう言っていただけると照れてしまいますよ」
森永「でもさ、本当にお客さん増えたよね。結構常連さんもついてきているんでしょう? 今日も見まわしただけで数人知った顔がいるもん」

 ようやくお店を立ち上げてから一年という時間が経過しようとしています。紆余曲折を経て、こういう形に落ち着きましたけど、その話はまた今度話そうと思います。

光武「そうですね。お店の雰囲気も一年前と比べるとかなり変わったと思います。いい意味でお店として成熟してきたんだと思います」
森永「たしかにそうだよね。去年の夏頃から通い始めたけどさ、雰囲気も少しずつ変わってきているよ。」
光武「その意味では、当初立ち上げたコミュニティがしっかりと定着してきたんでしょうね。いい意味で成熟してきているというかな。そんな感じがしますね」
森永「うん、それがブラッツの魅力なのかもしれないね」

 ハイボールを飲みながら今日も森永さんは楽しそうです。楽しそうな森永さんの様子を見ていると、僕の脳内では昔の旅の記憶が再生されてきました。ADHDの傾向でしょうか、どんどんと連想は進んでいきます。

 森永さんに自分の体験を話してみることにしました。

光武「僕、20代の頃にメキシコに一人旅をしたことがあるんです。叔父がブラジルに今も住んでいるんですけど、なぜか中央・南アメリカに対して惹かれるものがあって。今思えば、叔父も(発達障害の特性の一つである)多動だなぁと思うことがいくつもありましたね(笑) 。

 ちなみに母の弟なんですけど、僕の一族は中南米に惹かれるんでしょうかね。で、話を戻すと11月の1~2日にかけて、メキシコの原住民のインディオたちは“死者の日”というお祭りをするんです。日本でいえばお盆に当たるようなものかな。その日には死者たちが帰ってくるそうなんですね」

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インディオたちは死者を迎えるにあたって何をする?

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※ユーチューブチャンネル「ぽんこつニュース」でも光武さんが発達障害バーの日々を配信中

発達障害グレーゾーン

徹底した当事者取材! 発達障害“ブーム"の裏で生まれる「グレーゾーン」に迫る





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