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ロスジェネ世代の発達障害者が就職難の時代を経て気がついたこと

― 第11回 ― 東京・渋谷にある発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」。ここは、マスター以下スタッフのほぼ全員が“発達障害の当事者”であるバーです。当店には毎晩、僕らと同じように発達障害の悩みを抱えたお客さんたちが数多くいらっしゃいます。そんな生きづらさを抱えた方たちが少しだけ羽を休めに立ち寄るバーの日常を、僕、マスターの光武克(みつたけ・すぐる)がご紹介します。 ==【発達障害とは?】== ■自分の世界に閉じこもりがちな「自閉症スペクトラム症」(ASD) ■注意欠陥と衝動性が強い「多動性注意欠陥障害」(ADHD) ■特定分野(計算だけ異常にできないなど)の理解が困難な「学習障害」(LD) 上記の3種類が一般的に知られている。発達障害者はそれぞれ複雑な“特性”を抱えそれによって日常生活において、さまざまな支障が出る人も多い。 =============

ロスジェネ世代と発達障害

 ロスジェネ世代、「失われた世代」と呼ばれるバブル崩壊後のおよそ10年間に社会人になった世代がここ数年話題になっています。具体的には1970年から1982年頃に生まれた人がこの世代に当てはまります。彼(女)らは、就職氷河期に就職活動を行わざるをえなかったことから、正社員雇用ではなく非正規雇用として働くことを余儀なくされた人が多いのです。就職で苦労したという経験がその後の人生に大きな影響を与えており、生きづらさを抱える人が多いようです。  さて、今日のお客様は「ロスジェネ世代のADHD代表」と豪語する松村さんです。彼は有名私大を卒業後正社員として働くも、仕事に疲れ双極性障害と適応障害を発症し、離職を余儀なくされました。その後、非正規雇用の事務職を務めたのちに、心機一転フリーランスの予備校講師となり、仕事を通じて僕と知り合うこととなりました。  そんな松村さんが今日はBRATsに来店なさるそうです。ちょっと緊張しながら、彼の来店を僕は首を長くして待っていました。 松村「光武先生ご無沙汰しております。あっここでは光武さんの方がいいのかな?」  少しはにかみながら村松さんが来店なさいました。 光武「あ、松村先生。お久しぶりですね。お忙しいなかご来店ありがとうございます!」 松村「僕は光武先生とちがってスケジュールがスカスカだから大丈夫なんだよ」 光武「あいかわらずキレッキレの切り返しですね」 松村「ははは、光武さん。この盛況ぶり凄いものだね。予備校の顔とは違う一面を見られて僕もうれしいよ」  松村さんとの付き合いはかれこれ5年になります。僕は、普段予備校の中ではあまり目立たないようにしているのですが、なんとなくそそっかしい行動や核心を突く発言をみていると、自分と同じ匂いを彼に感じとり、すぐに打ち解けた関係になりました。お酒が大好きな方で、苦労なさった経験を笑い飛ばすようにお酒を楽しく飲まれる、その笑顔が周囲の人を引き込む魅力にあふれていました。 光武「よかったらご注文を先に聞いちゃいますね」 松村「やっぱり仕事帰りはビールだよね」 光武「かしこまりました」  差し出されたビールを口にしながら、村松さんはニッコリ笑います。 松村「あー生き返る。この一口のために仕事をしてる感じがするよ」 光武「ははは、僕もその気持ちよくわかります。仕事帰りに飲むウイスキーは格別ですから」 松村「本当に光武さん、そうやってかっこつけるんだからなぁ。ええかっこしい」 光武「そういういじり方をなさるのは松村さんくらいですよ!」  たわいもない会話が心地よく、彼との時間がゆっくりと流れていきました。そこで、話題が仕事の話、そして彼の過去へと移っていったのです。 光武「松村さんって、予備校講師になる以前も、いろいろと仕事を経験していらっしゃいますよね。予備校講師に、というよりはフリーランスにですかね? なろうと思ったきっかけがあれば教えてもらえます?」 松村「光武さんも知っていると思うけど、K大を出てるじゃん、僕は。やっぱりさ、あの優秀だと言われるK大に行っちゃうと、へたに小さなところに就職すると負け組みないな空気があったんだよね。今もあると思うけどさ」 光武「僕もその空気感じたことがあります。僕も大学がJ大だったので、やっぱり就職するときの圧力みたいなものは感じましたね」 松村「やっぱりそうだよね、でさ、僕はちょうどロスジェネ世代と呼ばれる時期に生まれちゃったからさ、とにかく就職氷河期だったんだよね。本当に苦労して、某都市銀行に入ったんだよ。もともとメガバンクに行きたかったし、K大の手前、大手に行って当たり前って空気もあったから、あの時はきつかったな。周囲に比べて自分が無能な人間に思えてきつかったよ」
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就職から逃げた過去も
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※ユーチューブチャンネル「ぽんこつニュース」でも光武さんが発達障害バーの日々を配信中

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