「生きづらさ」を抱えた人の避難所は自然につくられていく――光武克の「発達障害BARにようこそ」
森永「本当に日本と似ているね。それじゃあ日本と違うところもあったりするの?」
光武「もちろんあります。それは、帰ってくる死者が違うんですよ。日本だと、ご先祖様が帰ってきますよね? インディオたちは自分たちが懐かしいと思う人たちが帰ってくるのだそうです。距離の近さが血縁と結びつきやすい日本とはまったく違った感覚だなと思いますね」
森永「それは面白いね。距離の近さってことは友人とかってこと?」
光武「そうです。あと尊敬する人とかも含まれるみたいですね。そんな風に自分が懐かしいなって感じる人たちが帰ってきた際に、お迎えをする儀式を彼らは持っていたんですね。それじゃあ問題です。彼らはそうした死者を迎えるにあたって何をするでしょう?」
森永「えー、なんだろう。わかんないな。日本だと、ご先祖様にお供えものをあげたりするよね。そんな感じのこと?」
光武「正解です!何日も前からゆっくり食事を作ったりして準備をするみたいですね。ただ面白いのは、この食事の数なんです。必ず一人分余分に作るみたいですよ」
森永「なんでそんな無駄なことするの?(笑)」
光武「ええ、無駄ですよね。でも帰ってくる死者にはどこの家からも呼んでもらえない僕みたいな“ボッチ系幽霊さん”がいるらしいんですよ。そうした幽霊を見つけたら、『お前寂しそうにしてんな、俺が招待してやるからこっち来いよ!!』って別の幽霊が勝手に連れてきちゃうんですって。
ADHDだけでなく、ASDの傾向も強く持つ僕は、プライベートなコミュニティ内では、ボッチになりやいすいんですよね。だからかな、凄くこのボッチ系幽霊には共感しちゃうし、そんな僕だからこそ、すんなりとコミュニティ内に入れてくれる人になつきやすいんですよね」
森永「なにそれ。どんなコミュニティだよ! 発達障害のためのコミュニティじゃん、それ」
光武「本当にそう思いますよ。そうやって連れてこられたボッチ系幽霊さんに食事がなかったらかわいそうだと。それで彼らや彼女たちの分を余分に用意するんですって。僕の実家のお盆でもちょっと似たようなことやっていましたね。祖母が先祖の分とは別に『餓鬼』の分も用意していたんですよ。
お盆に帰ってきて帰る場所がない『餓鬼』が先祖の分まで食べ散らかすから、用意するんだって教わりましたね。インディオの気質と日本の気質の違いが感じれて面白いなって個人的には思います」
森永「あーたしかに。うちはその風習なかったかな。そもそもお盆をちゃんとやっていなかったよ」
光武「たしかに家庭環境にかなり左右されますよね、こうした体験は。で、ちょっと話が長くなっちゃいましたけど、インディオの話って凄くブラッツの雰囲気に似ているなって僕思うんです。もうすぐブラッツが出来て一年経つんですけど、ブラッツって凄くいい意味でコミュニティになったんだと思うんですね。最近ご新規の方がまた増えてきたんですけど、そういう方ってやっぱり緊張しているんですよ。」
森永「あーそういう人いるとたしかに積極的に声かけちゃうわ(笑)」
光武「でしょう?森永さんだけじゃなくて、結構常連さんがみんなで話の輪を作っているんですよね。僕、仕事だから接客できますけど、こういう場所にプライベートで来たら、絶対ボッチになりますもん。それなのに、ブラッツではボッチになりにくい。ボッチになりそうな人がいたら自然と話の輪の中に加えていく。そういう雰囲気が出来てきたんでしょうね。」
(みつたけ・すぐる) 発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」のマスター。昼間は予備校のフリー講師として働く傍ら、‘17年、高田馬場に同店をオープン。’18年6月からは渋谷に移転して営業中。発達障害に関する講演やトークショーにも出演する。店舗HP(brats.shopinfo.jp) ツイッターアカウント「@bar_brats」
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※ユーチューブチャンネル「ぽんこつニュース」でも光武さんが発達障害バーの日々を配信中
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