恋愛・結婚

発達障害当事者の“恋愛”はやっぱり少し独特?――光武克の「発達障害BARにようこそ」

光武克の「発達障害BARにようこそ」第2回

 東京・渋谷にある発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」。ここは、マスター以下スタッフのほぼ全員が“発達障害の当事者”であるバーです。当店には毎晩、僕らと同じように発達障害の悩みを抱えたお客さんたちが数多くいらっしゃいます。そんな生きづらさを抱えた方たちが少しだけ羽を休めに立ち寄るバーの日常を、僕、マスターの光武克(みつたけ・すぐる)がご紹介します。

====【発達障害とは?】====
■自分の世界に閉じこもりがちな「自閉症スペクトラム症」(ASD)
■注意欠陥と衝動性が強い「多動性注意欠陥障害」(ADHD)
■特定分野(計算だけ異常にできないなど)の理解が困難な「学習障害」(LD)
上記の3種類が一般的に知られている。発達障害者はそれぞれ複雑な“特性”を抱えそれによって日常生活において、さまざまな支障が出る人も多い。
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 こんにちは。発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」のマスター、光武克です。昼は予備校でフリーの講師として働き、夜はこのお店に立って、たまにはこうして執筆活動もしたりしています。

 さて、今回のお客様はどんな悩みを抱えていらっしゃるのでしょうか? お客様の話を聞くことを心待ちにしながら、僕は今日もお店へと出勤します。

 中秋の名月を見ながら「そんなものよりお団子食べたいなぁ」とか「月にいるうさぎと会話してみたいなぁ」なんてことを妄想していた9月の中ごろのことでした。橋本朋美さん(仮名)という若い女性が一人でお店を訪ねてきました。

「こんにちは、女性一人でも大丈夫ですか?」

 緊張しながら橋本さんは、カウンターに座りました。

 話を聞いてみると、彼女は現在23歳の大学院生だということです。

光武「ご注文はいかがいたしましょうか?」

橋本「えっと、そうだなぁ……うん、シャンディーガフください」

 最初は緊張していて口数が少ない方も、お酒を飲むと饒舌に話し始めます。

橋本「私、まだ診断を受けたわけじゃないんですけど、父がADHDということもあって、母からよく『あなたもなんじゃない?』って言われるんですよ」

光武「お父さんがそうなんですね。じゃあお父さんと似ている部分がたくさんあるんですか?」

橋本「はい、父は1週間で3回パスポートをなくして、母と職員の方が一緒にあきれていました。私も昔から忘れ物が多くて、よく母が学校に届けに来たりしていました。友達からはいっつも朋ちゃんのママは学校に来るんだねって言われていたんですよ」

光武「ははは、僕もそうでしたね。僕の場合、家が近かったので小学校・中学校の頃は、無断で休み時間に忘れ物取りに帰ってましたけど(苦笑)」

 当店には「まだ発達障害の診断を受けているわけではないけど、自分がそうじゃないかと疑っている」というお客様もよくいらっしゃいます。ツイッターで当店のことを知ってお越しになった橋本さんも、どうやらその一人だったようです。お酒も飲んで緊張が解けてきた橋本さんは、より深い部分まで話し始めました。

橋本「そういえば、光武さん、わたしようやく彼氏ができたんですよ。 ずっと好きな人ができなくて悩んでいたんですけど」

光武「橋本さんもなんですね。結構いらっしゃいますよ、そういう方」

橋本「よかった。私、ずっと周りの子たちとのガールズトークについていけなくて…でもなんでなんでしょうね、私がズレていたのかなって思うんですけど。そのズレをうまく言葉にできなくて」

光武「うーん、そうだな。あっ、橋本さん。それってもしかして好きなタイプに“強いこだわり”があったのかもしれませんね」

 どうやら橋本さんは、長い間恋愛に関して悩んでいたとのことです。 前回は仕事に悩むお客様のご相談をご紹介しましたが、橋本さんのように、「恋愛」で悩みを抱える当事者の声もよく耳にします。

 ここ数年は婚活パーティーや街コンが話題になったり、マッチングアプリが普及したりするなど、多くの人が恋愛に積極的な風潮ですね。草食系男子という言葉がもはや過去のものとなっている気さえします。

 しかし、発達障害を抱える人は恋愛においてその“特性”がネックになっている部分が多いのです。

 例えば、多動性が強い人だと「子供っぽい」と言われ、衝動性が強くてずっと喋り続けている人だと、話を聞いてもらいたいと思っている女性からは引かれることが多い(ちなみに僕は両方とも経験済みです)。

 また、衝動性から距離感を急速に詰めすぎてセクハラと捉えられてしまうこともあります。ASDの特性が強い場合、そもそも自閉傾向の強さから、会話自体が苦手というケースも少なくありません。

 ちなみに、このように「恋愛」に対する当事者(特に男性)が多い傾向が見受けられるので、「これってニーズがあるんじゃないか?」と考えた僕は、以前、お店で合コンイベントを企画したことがあります。しかし、多くの一般的な婚活イベントと同じように、男性よりも女性のほうの参加費を安くしたら、なぜかSNSで炎上してしまったんです(笑)

 僕自身がそうなのですが、男女問わず公平さを重視される方がとても多いんですね。また、そもそも自分の価値をジャッジされることを嫌う女性が発達障害の当事者の中にとても多いように思いました。加えて、いわゆるセクシャルマイノリティの方もいらっしゃいますから、そのすべてをケアできるイベントの開催は難しいなと実感したわけです。それなりに当日は盛り上がってイベントは終わったのですが、しばらく開催することはないと思います。

 個人的な意見を言えば、当事者の方は皆さん自分の置かれている状況をただ受け入れてくれる人を探しているように思います。特に男性は恋愛で失敗しているケースが多いからか、そうした状況を強く求める傾向が女性より強いのかなと。ただ…………

橋本「………さん、光武さん!ボーっとして私の話聞いてます?」

 おっと、橋本さんとの会話の途中でした。完全に忘れてしまっていました。これも「発達障害」の特性の一つ。関連する情報からいろいろと思考の連鎖が続いてしまって、気づけば本題から逸れてしまっているという……。

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恋愛対象となる人の範囲が狭すぎて…

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