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「謝れ!SNSで晒すぞ!」…悪質クレーマー増加の根本原因

 昨年11月と今年5月放送の『クローズアップ現代+』で大反響を呼んだカスタマーハラスメント問題が、一冊の本となった。『カスハラ モンスター化する「お客様」たち』(NHK「クロースアップ現代+」取材班編著、文藝春秋刊)は、被害の実例と専門家による社会的背景の分析に加え、かつてクレーマーだった人物のインタビューも交えて、多角的にアプローチしている。
クレーマー

写真はイメージです(以下同)

接客業の人の74%が悪質クレームを受けたことがある

 2017年にUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)流通部門が、接客対応している約5万人に行った調査によると、73.9%もの労働者が業務中に迷惑行為(悪質クレーム)を受けたことがあると回答したという。  そのうち、暴言の被害が27.5%と最も多く、続いて執拗なクレームや威嚇的な言動など、精神的にダメージを与える迷惑行為が全体の半数以上を占めていることが明らかになった。  もっとも、“カスハラ”自体は、日本だけの現象ではない。海外でも、Uberの女性ドライバーが性的な嫌がらせを受けるといった事件が横行し、社会問題となっている。  だが、先述のデータが示すように、日本のカスハラは質が異なる。クレーマーと化した客が、労働者をマウントすることにより、歪んだ承認欲求を満たしていくのが特徴だからだ。この陰湿な構図から、「クロ現」取材班は、いまの日本社会が抱える問題を浮き彫りにしていくのである。 カスハラ

コンビニで「慰謝料100万円よこせ」という客

 本書には、様々なクレーマーが登場する。スーパーのタイムセールをさらに値切ろうと責任者を呼び出した結果、ごね得を勝ち取ってしまった客。  たった一度商品の入れ方が気に食わなかったからといって、それまでにそのコンビニで使ったと主張する200万円のうち、慰謝料100万円をよこせと脅しつづけた客。  さらには、トランクから荷物をおろす際、運転席から降りなかったばかりに、SNSで“サービスが悪い”と実名をさらされ、再就職できなくなってしまったタクシードライバーもいる。

「カネ払ってるんだから」と無理難題を…

 ひどいのは、介護施設での話だ。ある女性入居者の息子が、事あるごとに無理難題を突きつけてきたという。体調を崩し、別の病院に入院していたにもかかわらず、ヘルパーに母親の洗濯物を任せようとゴネたのだ。さらに退院した母親と外食をした際に「帰りは車がないから」と言って、レストランまで迎えに来させようとするなど、次々にあり得ない要求をしてきたのである。  言うまでもなく、職員が施設外で入居者の世話をする義務はないし、車をよこす件も、そもそも介護保険は被保険者の家族には適用できない制度だ。だが、息子の言い分は、こうだ。 <「高いお金払ってるんだし、それぐらいしても当たり前なんじゃないの?」>(p.39)、 <「外で食事してる間はオレが面倒見てるんだから、その時間はこの施設を利用してないじゃないか。じゃあ、その分の料金は返してくれるのか。おかしいだろ!」>(p.39) 車椅子 これらの発言に、カスハラ問題の根っこがあるのではないだろうか。クレーマー息子とのやり取りから介護職員が見たのは、<『私たちのお金で、あんたたちは生活しているんでしょ』>(p.41)という、誤った特権意識だ。つまり、“お客様は神様”であると都合よく解釈し、労働者への無理難題を正当化する方便として振りかざしている様子がうかがえる。  このように客がモンスター化してしまうのには、いくつかの要因が考えられる。まず、不景気で収入が増えないことによる、社会全体の閉塞感。“少ない給料の中からお前らにカネを使ってやっている。だから客の言うことを聞け”と考える人たちが増加しているのではいか、というわけだ。  広がり続ける格差も、ムチャクチャな論法に火を注いでいる要素のひとつだ。そこへきてSNSの発達により、同じく鬱屈を抱えた人たちによる、クレーマーへの誤った共感が拡散されやすい環境が整ってしまっていることも見逃せない。
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