ライフ

「謝れ!SNSで晒すぞ!」…悪質クレーマー増加の根本原因

クレーマーの根底に「私は評価されてない」という不満

 こうして、消費期限切れの「日本の勤労観」から脱しきれない企業風土と、価格以上の“おもてなし”を道徳的に当たり前のものとみなす客の間で逃げ場を失う労働者。客は、たいていが「普通の人」。だが、彼らに話を聞くと、自分の能力が正当に評価されていないなどの不満が根底にあったという。そんな鬱屈した正義感に、いつ燃料が注ぎ込まれるかは分からない。モンスターカスタマーがそこかしこに潜んでいるという状況なのだろうか……。  カスハラ取材を通じて、相沢孝義チーフプロデューサーは、<過剰な自意識と他者に対する想像力の欠如>(p.218)を感じたという。つまり、“自分への評価が不当に低い”と感じる自己愛の大きさに反比例して、他者を思いやる気持ちがどんどん薄れていっているということだ。  言うまでもなく、他者への思いやりは社会活動の前提となるべきセーフティーネットである。だが、それも現代の日本においては、瓦解しつつあるのではないか。悲壮感漂う本書からの警告は、重たい。 【関連記事】⇒「ゴキブリを持ったまま土下座させられた」横暴な客に泣く店員たち <文/石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
1
2
3
おすすめ記事