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ここに告発する。僕がウンコを漏らした、南相馬鹿島SAを許さない――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第62話>

地獄の便意を抑え、やっとのことで南相馬鹿島SAに到着

 いつもならここで悶絶して、おまけにトイレがありそうなサービスエリアは遥か先、みたいな状況に陥りがちだが、今回はそんなことはなかった。あと数キロで「南相馬鹿島SA」という場所に着くよ、という看板が誇らしげに咲き誇っていたのだ。  ただ、ものすごくノロノロ走っていた車が1つしかない車線を塞いでいて、長蛇の車列になっており、ぐおおおおおおおお、早く行ってくれええええと悶絶し、命からがら南相馬鹿島SAへと到着した。あやうく煽り運転に手を出しかねない鬼気迫るものがあった。  南相馬鹿島SAはとてもに立派なSAだった。駐車場も広く、建物も大きくて和風で雰囲気が良い。土産物や食事など、かなり充実していそうな感じだった。ただし、早朝ということもありその建物は営業しておらず完全にクローズ。少し離れた場所にあるトイレだけの建物が絶賛営業中という状況だった。

南相馬鹿島SA「セデッテかしま」(画像は公式HP)

 「もうダメだ~」  と訳の分からない言葉を口にしながらそのトイレの建物に駆け込むと、当たり前というか予定調和というかなんというか、4つある大便ブースその全てが塞がっていた。満員御礼、ソールドアウトである。  いい。ここまではいい。ある程度予想していた。朝の早い時間だ。みんな朝にウンコしたいはずだ。  それならばこうして4つある大便ブースが埋まることなど簡単に予想できた。こっちだって「もうダメだ~」と言いつつも(まだあとちょっとは大丈夫だな)と心の奥底で理解している。だからこんなことで動揺したりしない。  ただ、このトイレの構造がまずかった。本当にこんなトイレあるのかよって言いたくなる構造で、悪夢としか思えないものだった。図解すると以下の通りだ。  なるほど、立派なトイレなのだけど、なぜかトイレは2つの小部屋に分かれた構造になっていた。中央に入口があり、そこから左右に分かれている。それぞれに洗面台と小便器、そして大便ブースが2つずつ備えられている。  この構造の何が問題なのか。はっきり言ってこれが分からない人はウンコに苦しめられたことがない人だ。ウンコを漏らしたことがない人だ。人の痛みを分からない人だ。  普通に、ああ、ウンコしてえ、とトイレに駆け込んでブースが空いているのならば問題ない。好きに出せばいい。何も問題ない。誰も不幸にはならない。  ただ、これが満員だったらどうなるか。そう、例えば左側の方に駆け込んで、ブースAとBが堅く門を閉ざしていたらどうだろうか。きっと、そのまま右側に駆け込んでブースCとDを見るはずだ。まずこの時点で、数歩、無駄に歩かされている。たかが数歩じゃんと思うかもしれないが、ウンコが漏れそうなときの数歩だ、その距離はサンフランシスコからニューヨークまでに匹敵する。  さらにここからが本格的に大問題だ。  普通、大便ブースが満員の場合、その順番を待つわけだ。一般的には、洗面台の前あたりの邪魔にならない場所に陣取り、全てのブースに睨みを利かせる。けれども、この構造の場合、どこに並んでいいのか分からないのだ。  図で示した地点で待った場合、ブースCとDしかカバーできない。AとBの様子を窺い知ることはできない。そっちが空いたというのに苦悶の表情で待つことになるのだ。逆もしかりで、どちらかで待つ場合、2つのブースしかカバーできない。
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トイレ設計者は一度ウンコを漏らして、痛みを知ったほうがいい
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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