拳銃をトイレに置き忘れた女性警官がバイトしてた風俗店とおっさん――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第66話>
―[おっさんは二度死ぬ]―
昭和は過ぎ、平成も終わり、時代はもう令和。かつて権勢を誇った“おっさん”は、もういない。かといって、エアポートで自撮りを投稿したり、ちょっと気持ちを込めて長いLINEを送ったり、港区ではしゃぐことも許されない。おっさんであること自体が、逃れられない咎なのか。おっさんは一体、何回死ぬべきなのか――伝説のテキストサイト管理人patoが、その狂気の筆致と異端の文才で綴る連載、スタート!
【第66話】人の裏側に潜むもの
ホットな話題が飛び込んできた。
最近になって、とあるネットニュースが世間を騒がせたことはご存じだろうか。
「拳銃置き忘れの女性巡査長に停職1か月 風俗店でバイトも 依願退職」(毎日新聞)
兵庫県相生市にある相生駅、新幹線も停まる比較的大きな駅だが、その駅構内のトイレに実弾入りの拳銃と手錠を置き忘れた女性巡査長がいた、という事件だ。幸いにも一般客が発見して通報、回収され、使用された形跡はなかったようだ。
まさか警官が拳銃を忘れるか、とんでもない事件があるものだ、と世間を驚かせた。確かこのニュースが最初に報じられたのはちょっと前のことだった。
それからしばらくして、この事件の続報があった。それが上記の見出しのニュースなのだけど、あの拳銃を置き忘れた女性巡査が停職1か月の処分を受け、依願退職した、というものだ。それ自体はありふれたニュースで、ある意味では予想通りだが、このニュースにはさらに付加情報があった。その女性巡査、風俗店でのアルバイトまで露見してしまい、合わせ技でアウト、みたいな感じだったようだ。
この事件を報じたメディアによっては、やたら詳しくこの風俗店でのプロフィールを報じており、「胸元には真ん丸のDカップ スレンダーな体つきからは想像もできないメリハリのあるボディ」(週刊朝日)などと、特定してくださいと言わんばかりの勢いで情報が出されていた。案の定、即座にネット民によって特定されていた。
女性巡査長が勤めていたとされるお店は暴かれ、どの女の子なのかまで一瞬で辿り着いていた。相変わらずこういった場面でのネット民の働きはすごいものがある。研究を重ねたら発電とかに利用できるんじゃないか。
また、その特定された店や女性が正解なのか定かではないが、その女性がけっこうかわいくてエロい感じだった。それがネット民に火をつけ、けっこうな騒ぎになってしまった。あいかわらずこういう時のネット民の熱狂はすごいものがある。発電とかに利用できるんじゃないだろうか。
とにかく、真贋のほどは分からないが、人はこういった誰かの「裏の顔」みたいな話が大好きだ。女性巡査長が風俗店、そんな話に大きな興味を持つ。そしてそれが露見した時、こうやって大騒ぎになるのだ。けれども、そこまでではないにしろ、人はだれしもが他人に知られたくない裏側を持っている。導入が長くなってしまったが、今日はそんなお話だ。
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri)
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『pato「おっさんは二度死ぬ」』 “全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"―― |
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