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拳銃をトイレに置き忘れた女性警官がバイトしてた風俗店とおっさん――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第66話>

風俗のことしか考えてなさそうで、実は純愛経験有りの馬場

 確かに、馬場さんは風俗店のホームページにやたら詳しい。くまなく風俗店のホームページをチェックし、坂口杏里が在籍している店を見つけて「似ている芸能人:坂口杏里」の記述を見つけて激怒していた男だ。  それを考慮してもあまりに剛の者すぎる。立川から遠く離れた大阪、日本橋の風俗店、まさかそんなところまで網羅していて、制服を見ただけで判別するとは思わなかった。  「なんで大阪の店にまで詳しいんですか?」  今までちょっと心の中で馬場さんのことをバカにして下に見ている部分があったのだけど、はっきりとそれが“尊敬”に変わった瞬間だった。  「いいや、そうじゃねえんだ。実はな……」  なぜか馬場さんのテンションは低い。  「いくら俺でも大阪の店まではカバーしてないよ。実は事情があってな」  LINEでも重い口調だと分かる感じで語り始めた。  「実は、大阪の女の子と遠距離恋愛していたんだ」  意外な話が飛び出した。馬場さんによる突如の遠距離恋愛宣言、戸惑いが隠せない。  「節約のために老体に鞭打って深夜バスに乗ってよ、大阪まで行くんだわ。彼女は別れ際に“また来てね”なんていうわけよ」  唐突な純愛宣言だ。僕はてっきり馬場さんは風俗と風俗嬢のホームページと坂口杏里のことしか考えていない人間だと思っていた。けれども、僕の知らない裏の顔があって、純愛に身を寄せているのだ。人はだれしも裏の顔がある、そう実感した。ただ、普通は裏の顔が風俗好きとかなのに、純愛が裏の顔になってしまうのが馬場さんの悲しいところだ。  「そんな遠距離恋愛しちゃうほどの彼女、どこで出会ったんですか」  そう質問すると、馬場さんはすぐに返答をくれた。  「そりゃ、路上よ。なんばの路上でな、いやあそこは正確には日本橋だな。レンガ風の歩道が続く通りでな、突然彼女が手を握ってくるわけよ」  「むちゃくちゃ積極的じゃないですか」  「おうよ」  路上で出会い、手を繋いで歩く、純愛だ。  「また来てね、とか言われたら大阪であろうと行くしかねえだろ」  純愛だ。  「だから、深夜バスよ。正直きついけど、仕方ないよな。節約よ。節約すればするほど会いに行く回数が増えるわけだし」  純愛だ。  「あと、会った後に東京に戻るだろ、そこで彼女のホームページのお礼日記を読むのが最高にワクワクするな。楽しかった、また来てねとか書いてあるんだよ」  純あ……えっ!?
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誰にでも裏の顔がある。ただし馬場を覗いて
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pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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