更新日:2023年04月25日 00:38
ライフ

拳銃をトイレに置き忘れた女性警官がバイトしてた風俗店とおっさん――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第66話>

風俗嬢の写真だけで店の名前を当てた馬場

 馬場さんからのLINEは未明に届いた。  馬場さんとは、立川の場外馬券場に巣食うおっさんで、風俗嬢のホームページを熟読し、風俗嬢と仲良くなることに命を賭けている男だ。すっかりこの連載の準レギュラーみたいになってしまった。詳しくは第34話第47話を参照されたい。  この馬場さんとは、僕自身が最近あまり立川の場外馬券場に行っていないこともあり、全然会えないでいた。それでもLINEでのやり取りはしていて、相変わらず立川の風俗に入れあげる馬場さんの話をうんうんと聞く日々が続いた。 「話題なにかたのむ」  突如のLINEで懐かしの電車男のようにそう要求してくる馬場さん。これはいつものあれが始まることを示していた。  馬場さんはいつもネットで話題になっているホットな話題を教えてくれと要求してくるのだ。どうやら、自分がトレンドにも敏感な若いおっさんと風俗嬢にアピールしたいらしく、僕から仕入れた話題をそのまま風俗嬢に伝えているようだ。  僕も「いまは青汁王子ってのが話題で」「100万円を配っていて」「坂口杏里がその100万円を貰って」とホットな話題を提供し続けていた。  一度だけ、「両方の面が裏面のエラーコインは希少だけど、それより希少な片方だけ裏面のエラーコインが発見された!」と嘘のニュースを教えたら、風俗嬢に「それって普通のコインじゃない?」と言われたらしいので、ガチで何も疑わずに披露しているらしい。  そこで僕は、前述した拳銃置忘れの女性巡査長が風俗バレもした、という話題を提供した。風俗嬢に話す話題に風俗バレをチョイスするあたり、僕もまあまあ空気が読めない。それでもネットではこれじゃないかって言われてますよ、とモザイク写真付きで報じているニュースのURLまで教えた。  馬場さんのことだからこういったニュースは大好物だ。大喜びで風俗嬢に話してくれると思ったが、その反応は意外なものだった。 「これ、大阪の日本橋のXXXXって店だろ?」  馬場さんから突如として具体的な店名が飛び出してきた。  確かに、ネットニュースに掲載されている女性巡査長とされる画像は、特徴的な青い制服調の衣装だった。急いで馬場さんから指摘された店名を検索してみると、本当にほとんどの女のコがその特徴的な青い制服を着ていた。件の女性巡査長とされる画像は消去されたようで存在しないが、撮影の感じもモロに同じだ。もしネットニュースの記述が正しいのならこの店でビンゴだと思う。  「何者だよ、馬場……」  未明の寝室で僕は呟いた。
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風俗のことしか考えてなさそうで、実は純愛経験有りの馬場
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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