更新日:2019年11月11日 15:57
仕事

渋谷ハロウィンの混乱を抑えた“コワモテな民間警備員たち”の正体

クラブや格闘技イベントの警備など、若者たちに知られた存在

BONDS

「株式会社 BONDSグループ」代表の伊勢野寿一氏(中央)

「昨年度までは警察のみの対応でしたが、今年は渋谷区から初の試みとして依頼をいただき、マナーアップと渋谷周辺区域のクリーンパトロール(ゴミ拾い)など、我々民間会社が一緒になって警備にあたりました」  こう話すのは 「株式会社 BONDSグループ(品川区)」代表の伊勢野寿一氏だ。元自衛隊員、大学の柔道、相撲部員、そして現役の格闘家が所属する警備会社で、伊勢野氏自身も現役の格闘家。設立当初は都内のクラブイベント、格闘技イベントのセキュリティ業務をこなす「コワモテ」さでその名を轟かせていたが、今では官公庁依頼の業務までを担う屈強な「セキュリティチーム」として知られる。 「依頼者が何を求めているか、依頼内容にBONDSのマンパワーで使命感と誇りを持って応えるようにしています。渋谷ハロウィンでは、窃盗や痴漢、酒に酔った人の喧嘩などが起きましたが、大きな事件・事故の発生はありませんでした」(伊勢野氏)  ネット上でもBONDSは有名だ。昨年、渋谷区内の人気アパレル店に並ぶ転売目的の中国人たちが起こした乱闘騒ぎをとらえた映像が、ネット上で拡散された。あの時、暴れる中国人に非暴力で立ち向かい抑え込んだのが、他でもないBONDSのスタッフだったのだ。
BONDS

BONDSには女性メンバーも参加

 ハロウィン当日、警備にあたるBONDSを見かけたという大学生が振り返る。 「近くの居酒屋で飲んで、センター街をうろうろしてたんですよ。酔っぱらった勢いで、警察や普通の警備員から何か言われても『イェーイ』って感じだったんですが……友達が『BONDSいんじゃん』って叫んだあと、ちょっとヤベエな、となって。海の家やクラブでも見かけますが、その存在感は若者にとっては警察以上です。BONDSの前を通り過ぎるときはみんな黙ってましたね」(大学生)  前出のテレビディレクターは次のような光景も目撃している。 「酔っ払いの若者が揉め事を起こしていたので撮影していると、すぐにBONDSのスタッフが飛んでくるんです。若者はすぐにシュンと借りてきた猫のように大人しくなって、テレビ的には揉め事がすぐ収まり……という感が否めなくもないのですが(笑)。ただその若者、警察に引き渡された瞬間にまた小突き合いを始めました。BONDSすげえな、って」(テレビディレクター) BONDS 渋谷区が計上した多額の警備費用についての議論はさておき、渋谷区の試みは結果的には正しかったようで、例年と比べれば穏健で平和なハロウィンとなったようである。 「弊社の対応が微力ながらにでも、来場した方々の安全安心に貢献できたと思ってもらえたのであれば、警備冥利に尽きます。これからも警備業として“請け負う業務に使命感を持ち、次の世代が(憧れと誇りを持ち)目指せる会社”を理念に精進していきます」(伊勢野氏)  目には目を、暴れる若者を抑えるには「BONDS」を……といったところか。<取材・文/森鷹久>
佐賀県出身の編集者、ライター。元番組制作会社、出版社社員。著書に『脱法ドラッグの罠』(イースト・プレス)、共著に『ヘイトスピーチとネット右翼』(オークラ出版)。
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