エンタメ

おっさんは、全てにおいてタイミングが悪い。そりゃもう壊滅的に――patoの「おっさんは二度死ぬ<第69話>

やたらとサプライズにこだわる若者にちょっと引く

 「サプライズやりませんか」  いつものごとく値段設定がおかしいとしか思えない定食にがっついていると大学生の隼人君がそう切り出していた。  「どういうこと?」  すぐに節子から返事が返ってきた。  隼人君が言うには、常連の徳山さんが数日後に誕生日を迎えるのでサプライズでお祝いをしようということだった。  徳山さんはなかなか人間ができたおっさんで、自分が経営しているアパートに近所の工場で働く外国人を何人も格安で受け入れている人だった。その外国人からもかなり慕われており、いろいろと異国の地で困っているであろう彼らの相談に乗っているようだった。  この居酒屋にもよく外国人を連れてきていた。隼人君の相談にも乗っているようで、早い話がまあ、多くの常連が世話になっており、慕われていた。かくいう僕も、定食を食った後に金が足りなかったことに気が付き、2回ほど徳山さんにお金を借りたことがある。いいよいいよ、奢りだと言ってくれていたが、1200円くらい借りている計算だ。  「ぜったいに喜びますよ! やりましょう!」  隼人君は屈託のない笑顔でそう言っていた。  稀にこういった人がいるのだ。サプライズをすれば相手が喜んでくれて、仕掛けたほうもハッピーで、全てが丸く収まる。だっていままでそうだったもん。そういう人は本当にサプライズのことを信じ切っている。  けれども実際にはそんなことはなくて、サプライズが苦手な人だっている。  特におっさんの大半はどう反応していいのか分からなくなってしまう。それでも仕掛けた人に悪いから喜んだふり、驚いたふりをする。サプライズの持つ同調圧力ってやつはかなりのものだ。必ず喜んだフリをする。そうすると隼人君みたいな人はまた気を良くして仕掛けてしまう。  隼人君に悪気があるわけではない。ただただ純粋に人を喜ばせ、自分もハッピーになりたいのだ。そう信じて疑わない。本当にそれだけのだ。だからこそ本当に始末が悪い。  「そうねえ」  節子の反応はイマイチだった。なんとなくだが、徳山さんはそういうことを嫌いそうなのだ。面倒見がよいなどとちょっと褒められるだけで恥ずかしそうな顔をして、触れて欲しくなさそうにしているので、サプライズなんて喜ばないんじゃないか、そう思ったのだろう。僕も同じ意見だった。  「絶対に喜びますって! 保証します!」  何が彼をそうさせるのか分からないけど、彼は正義のヒーローを信じる少年のごとく目をキラキラさせていた。  「じゃあ、まあ、やってみようかしら」  節子もその純粋さに押し切られた形だ。  「大丈夫です! 常連はみんな協力しますよ!」  そして隼人君は、サプライズであれば全ての人が絶対に協力してくれると信じて疑わない。ここまでくるともはやサプライズ教だ。
次のページ 
そして暗闇の中、徳山さんはやって来た
1
2
3
4
pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事