エンタメ

NGT48再出発。そのとき現場は…

 NGT48が1月18日、東京・東京ドームシティホールで、「NGT48選抜コンサート~TDC 選抜、合宿にて決定。初めての経験~」を開催した。2019年、忘れられない時を過ごしたグループにとって、実に1年9カ月ぶりの単独コンサート。メンバーたちはどのような思いでステージに立ち、どのような再出発を遂げたのか。  客席を見渡すと、オレンジ色のTシャツを着たファンがやや目立つ。荻野由佳の生誕Tシャツだ。続いて本間日陽推しと思われる、黄色いTシャツのファンたち。ピンクで着飾った少女は、中井りか推しだろう。「りかちゃん」と書かれた大きなうちわを手に、開演を待っていた。キャプテン角ゆりあの影アナウンスに、待ちわびていたファンは大歓声で応え、しばらくして暗転を迎えた。 NGT48 しかし、定番の『overture』が流れない。巨大なスクリーンに映し出されたのは、少女たちの真剣な眼差し、先生の厳しい指摘に浮かべる困惑の表情、そして涙。人気やキャリアに関係なく、「現在の実力」だけを判断材料に行われた、オーディションの様子だった。選ばれた16人は合宿でさらにしごかれ、この日を迎えた。  真っ暗な客席では、観客がかたずをのんで物語の行方を見守った。映画館ではない。2000人を飲み込んだ、NGT48のコンサート会場だ。開演から約15分、ライブの導入にしては異例の長さのドキュメンタリー映像。ただならぬ雰囲気で、再起をかけたNGT48の真剣勝負は幕を開けた。 NGT48 ようやく『overture』が流れ、『春はどこから来るのか?』では楽曲センターの本間を中心に、全員が元気に飛び出してきた。「NGT48、単独コンサート、行くぞ~! さあ皆さん、コールを私たちに届けて下さい!!」。笑顔であおる本間の姿にファンも安心したのか、声援にも爆発力が乗る。続く『心に太陽』では、ポップな曲調に合わせてメンバーが何度も決めポーズ。そんな中、異変が起きたのは3曲目だった。 NGT48 『Let’s get あと1センチ』で、奈良未遥とともにダブルセンターに立ったのは、ドラフト3期研究生の藤崎未夢だった。「もっともっと、盛り上がって行きましょう!」。あおりも任された。160センチ台後半はあろうかという長身に、スラリと伸びた手足で、見栄えのかっこ良さは抜群だ。 NGT48 48グループファンの間でも知られているとは言えない存在だが、実は新生NGT48の看板メンバーの一人と期待される藤崎。ユニット曲『奇跡は間に合わない』でも、主力格の荻野を差し置いてセンターを担った。「こんなに大きなステージで、自分のうちわやサイリムを持ってくれている人がこんなにいるなんて、幸せ者だなって思いました。コンサートに向けての合宿、リハーサルでうまくいかないこと、自分が自信を失うこともあったんですけど、ここまで頑張って来てよかったなって思いました」。そのスタイルとは対照的なアニメ声も、彼女の魅力の一つだ。 NGT48 ここで、この日の出演メンバーの内訳を見てみよう。15年にお披露目された1期生が9人で、さすがの過半数。しかし、18年加入のドラフト3期生から2人、2期生が5人と、圧倒的にキャリアの少ない後輩たちの健闘も光った。小越春花は、自分が「はるか村の村長である」という謎設定を披露し、“不思議ちゃん”ぶりで強いインパクトをアピール。担当した『暗闇求む』の感想を聞かれると、「暗闇、求められて良かったです」と満面の笑みで珍回答を繰り出し、笑わせた。  山口真帆をめぐる事件以来、グループは一時、活動休止状態に追い込まれた。なかでも研究生たちは完全に日の目を浴びる機会を失った。しかし、めげずに鍛錬を重ねた結果、晴れの舞台に立つ権利を勝ち取り、ついには止まっていた時の流れを自らの力で動かした。 NGT48 さて、コンサートの本編ラストには、ステージの根幹ともいうべき演出があった。合宿で鍛えたボーカル、ダンススキルの披露だ。まずは『UZA』でのオリジナルダンス。ダンス講師からは「4年間で全然伸びてない。踊りがめっちゃうまい子なんて1人もいない」と酷評され、「動くんじゃなくて踊って欲しい」と基礎から再び叩き込まれた16人は、強と弱、硬と軟、あらゆるギャップを最大限に意識したメリハリのあるダンスを披露。成長の跡を見せた。 NGT48 そしてボーカルでは、グループの代表曲「Maxとき315号」を、初めてダンスなしの声だけで表現した。合宿中で実力、意識とも激変した小熊倫実が、ふんわりしたルックスからは想像のつかない力強い歌声を響かせ、何人ものメンバーが目に涙をためながら歌った。  事件の影響でバラバラになりかけた心は、少しずつ修復され、合宿を通じて絆のようなものが芽生えてきたという。中井が実感を込めて言った。「『(メンバーがお互いを)競い合う仲間』と言ってたけど、本当の意味でちゃんとした仲間にやっとめぐり会えました。メンバーと活動していて良かったなと思う瞬間が増えました」。珍しくストレートな感想に、メンバーからは「だから雪が降ったんだよ」と突っ込まれた。  2020年1月18日、NGT48は再び歩き出した。北国のグループらしく、雪の中での再出発だった。 取材・文/森本 隆 撮影/八杉和興
テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート