おばさんは並びおじさんは解釈を間違う
山内:美術館、よく行く人とまったく行かない人にパックリ分かれそう。でも企画展を追っかけるだけで、“俺の東京マップ”はすごく広がっていくと思う。テリトリーが狭まりがちな中年だからこそ、美術館巡りを新たな趣味にするのはアリかも。
エリイ:そうだね。ただ、おじさんが「これいいんじゃない?」とか言って解釈するの、全部間違ってるから、披露しないほうがいい。ワイン会とかで絵を買う青年実業家もやりがちで、彼らの標的になっているものは著しくダサい。作品のせいじゃないんだけどね。
山内:カミーユ・ボンボワっていう、サーカス出身の素人画家がいて、彼の作品はマッチョな大男に眠る、素朴でピュアなやさしい心をすごく感じさせるんです。カネやエロが好きなSPA!愛読者の、ちょっと“俗”な人間性の中にも、ボンボワのような“聖”な一面が眠っているかもしれない。案外スイッチが入ったらハマるんじゃないかな。美術館で、心の友が見つかることもあると思います。そういう気持ちでふらっと行くのでいいと思う。
エリイ:私の心の友、誰だっけな。いっぱいいたような気がするな。
山内:なにその素敵な名言(笑)!
▼山内マリコとエリイのおすすめ美術館3選
1位:ウィーン美術史美術館
「一日いても半分しか周れないほど広い。再チャレンジします」(山内)
「モナリザ以外あるのに混んでない。もはや誰もいない」(エリイ)
2位:原美術館(山内)
「室外機を隠す垣根までアート。隅々まで行き届いた美意識がイイ!」
2位:東京国立近代美術館(エリイ)
「日本の美術館で一番好き。展示の内容は忘れたけど多分いい感じ」
3位:東京都庭園美術館(山内)
「皇族が建てたアールヌーヴォーな旧邸と広大な庭。リッチの極み」
3位:国立台湾美術館(エリイ)
「ここはカフェが最高。’17年にはチンポムで巨大な『道』を作った」
【山内マリコ】
’80年、富山県生まれ。’12年作家デビュー。近著に『選んだ孤独はよい孤独』『山内マリコの美術館は一人で行く派展』など
【エリイ】
コンテンポラリー・アートユニット「Chim↑Pom」(チンポム)のメンバー。16周年を迎える活動内容を一挙公開する個展が森美術館で’21年4月開催予定
取材・文/新川貴詩 撮影/加藤 岳