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岡本太郎の絵に付け足された原子炉建屋の絵は「本物」だった――Chim↑Pomインタビュー

   大阪万博のシンボル「太陽の塔」と並ぶ、かの岡本太郎画伯の代表作「明日の神話」に“原画の付け足し”をしたのは“Chim↑Pom”だった――。    去る5月18日、そんな事件がテレビ各局の夕方のニュース番組で報じられた。渋谷駅構内の井の頭線改札からJRへ抜ける連絡通路にかかる巨大な壁画の一角に、福島第一原発事故を想起させるべニア板張りの絵(実際は塩ビ板に描かれた絵)が勝手に張られていたという。“付け足し”をしたとされるのは、エリイ、卯城竜太、林靖高、水野俊紀、岡田将孝、稲岡求の6人で編成された「Chim↑Pom」というアート集団。挑発的な作品を数多く発表し賛否両論入り乱れることもあるが、実は彼ら、海外からはすでに高い評価を得ている俄然パンキッシュなアート集団なのだ。   結成は2005年。渋谷のセンター街を逃げ惑う大量のネズミをピカチュウのはく製に仕立てた作品「スーパー☆ラット」でデビューし、2008年には広島の原爆ドームの上空に飛行機雲で「ピカッ」という文字を描くという衝撃作「ヒロシマの空をピカッとさせる」を発表。非難轟轟の嵐にさらされたこともあった。   今回騒動となった絵は「LEVEL7 feat.『明日の神話』」と題された作品で、岡本画伯に似たタッチで、爆発した4機の原発建屋が描かれている……。警視庁渋谷署は、今なお軽犯罪法違反容疑などで捜査しているというが、果たして、彼らが伝えたかったメッセージとは何だったのか? 日刊SPA!の取材に答えてくれた。 ――今回の騒動を、マスコミは“お騒がせアート集団”が引き起こした事件として報じています。夕方のニュース番組に至っては、実行犯は「Chim↑Pom」と報じているのに、なぜか、みなさんの写った写真にはすべてモザイクがかかって流れていました。 林 Chim↑Pomだからって、かけなくてもいいのに(笑)!! エリイ かけたほうがミステリアスさが増すのかもね!! モザイクってエロい!!! でも、報道で『否』のほうの部分だけ虚構して作り上げるっていうのは、成熟した社会ではないという証明になっていますね。情報が偏ってる社会ってすごく幼稚に見える。進化した社会って、もちろん歪みみたいのはあっても、もっとフラットな目線で何事も見られるんじゃないかな。 卯城 ネガティブなイメージだけ作ろうとしている感じがあって……ちょっと違うなとは思った。パブリックな場所での制作だし、さまざまな意見は出てくると思います。文化の役割がわかるような報道も重要視されるべきなんじゃないですかね。でも、その後、実際に作品を観にきてくれた人たちは、直で感想を言ってくれるからありがたかったですね。  夕方のニュースって毎日あのフォーマットでやってるじゃないですか。視聴者は「そんなたいしたことじゃないでしょ」みたいに見てると思うんだけどな……。アメリカとかヨーロッパだったら、「次はアートの話題です」ってちゃんと伝える番組枠があるんですよ。でも俺らの場合は、ニュース番組で今はイタズラとか軽犯罪のレベルでしか語られなかった。 卯城 僕は、そもそも現代の日本のアートがこれまで社会に発信しなさすぎたとも思っているんです。だから、今回の騒動も本質と違うところで騒がれてる。日本におけるアートの現状は、メディアだけじゃなくてアート側にも原因があったように思う。 ――実際は、何を伝えたかったのですか。 卯城 岡本太郎の「明日の神話」は広島、長崎と1954年の水爆実験に巻き込まれた第5福竜丸がモチーフになっています。福島のことが起きる前は、こういう放射能事故って20世紀の出来事ってイメージだったじゃないですか。それが、21世紀になっても実際に起こってしまった……。被曝を忘却しながら、原発安全「神話」の中で僕たちはずっと放射能に依存してきたわけです。それで放射能の被曝をまた経験してしまったことが重要だと思う。福島の原発事故を単発で見るんじゃなく、歴史的にちゃんと見て、日本はこういう被曝体験を何回もしてしまったってふうに捉えないと、また同じことが起きてしまう。未来に対しても過去からの流れで見る必要があると思うんですよ。 ⇒つづきはこちら
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