「坊さんになるしか道はないと思った」インド仏教のトップに立つ日本人が半生を激白
仏教発祥の地・インドには現在、約1億5000万人の仏教徒がいると言われている。そのトップに立つ人物が日本人なのをご存じだろうか。佐々井秀嶺上人。御年82歳。岡山県に生まれ、放蕩の末に25歳で出家、単身渡ったインドで差別を受ける不可触民の解放と布教活動を続けること50年。
’03年には長年の功績から仏教徒の代表として「少数者委員会」の委員も務めた。これはインド政府の副大臣に相当する要職であり、日本人が就任するのは異例中の異例だったという。そう聞くと聖人君子のような存在に思えるが、実際に彼に相対すると、その佇まいからは活動家のような武骨な印象を受ける。他宗教による暗殺の危機とも向き合いながら、今も闘う男なのだ。
そんな傑物の胸中に迫るインタビュアーは、現代アート集団「Chim↑Pom(チンポム)」のメンバー、エリイだ。原爆や原発問題などこれまで社会的なテーマを多く扱ってきた彼らもまた挑戦を続ける存在であり、仏教とアートというジャンルを超えた異色すぎる顔合わせがこのたび実現した。性別や年齢はもちろん、宗教観、人生観の違いを超えて、2人はどんな言葉を交わすのか。
エリイ:はじめまして。チンポムのエリイです。そもそも上人はどうして仏教の道を選ばれたのですか?
佐々井:小さいときは仏教なんて考えてもいなかったよ。でも、中学3年のときに急性肺炎にかかって1年間、一度も学校に行けなくてね。今思えば、その経験が大きかったな。
エリイ:その間、どんなことを考えていたのですか?
佐々井:外で遊ぶ級友を見て、悔し涙ばかり流していたよ。けれど自分ではどうにもならなくて、どんどん内向的になっていった。そんなとき、図書館で手にしたのが宗教書だった。親鸞さんや道元さん、法然さん、日蓮さんなどあらゆるものを読んで、どのように悩んで仏の道に入ったのか学んだ。トルストイとかも読んだけど、もう、坊さんになるしか生きる道はないと思ったね。
エリイ:そこからどう行動に移していったんですか?
佐々井:岡山の田舎に生まれたから、東京に出るしかないと思った。そこで、犬養健とか江田三郎といった岡山県出身の代議士に「書生にしてほしい」と片っ端から手紙を書いたんだよ。唯一返事をくれたのが江田三郎だったけど、「東京には悪いヤツらがたくさんいるから来ないほうがいい」という断りの手紙でね。でも、俺はその中身を伏せて、「江田三郎から返事がきた」と家族や周りに説明して、東京に出たわけ。しかし、いざ出てきても仕事がない。そこからは家出同然で東京にやってきてカネがなくなったら岡山に戻る、という暮らしをしばらく続けていたな。
エリイ:なかなか思い通りにはいかなかったんですね。
佐々井:ええ。特に昔は人一倍女性への欲が強くてね。うまくいかず悩みに悩んだ。そうやっているうちに自暴自棄になって、自殺未遂をしたこともあったね。出家しようといろんな寺を回ったけど、ことごとく断られ、最後に山梨県・大善寺の井上秀祐住職に拾われて。そして住職の兄弟子の高尾山薬王院・山本秀順貫主と出会い、25歳で出家したんだ。
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