「此処より下に家を建てるな」 津波から人々を救う言い伝え
―[先祖伝来の[大津波伝承]に学べ]―
東日本大震災で多くの人の命を救ったとされる先祖代々語り継がれてきた大津波伝承。そこで、小誌取材班が全国各地に今なお残る大津波にまつわる言い伝えを徹底調査。実際に現地を訪れ、風化しつつある先人たちの津波警告をリポートする!
【東日本の大津波伝承】
此処より下に家を建てるな––。
こう書かれた石碑の言い伝えを守り、海抜60mより下の地域に家を建てず一人の犠牲者も出さなかった岩手県宮古市姉由地区。同じく、先人の言い伝えのとおり、集落を高所移転させていた大船渡市吉浜地区も被害はほとんどなかった。
生死を分けた先人たちの教えを記した津波伝承は、一部メディアで“美談”として報じられ、注目を集めている。
だが、こうした津波伝承が、全国各地に存在することはあまり知られていない。
「大正12年の関東大震災以後、『災害の対策や教訓を伝承すべき』という動きが盛んになりました。特に、三陸地方では明治に1回、昭和に2回と大津波による甚大な被害を受けているため、石碑や昔話のような形での津波伝承が多く存在しています。ほかにも千葉県や静岡県など太平洋沿岸地域をはじめ、全国各地に同じような津波の伝承が見られます」(東北大学名誉教授・首藤伸夫氏)
東北地方以外でも千葉県の外房にある長生郡には1703年に九十九里浜を襲った元禄津波の被害者の供養碑があり、千葉県安房郡鋸南町にも死者を合祀した地蔵尊(マップ3)が存在する。
特に、これまで何度も津波被害に遭い、多くの犠牲者を出し、東海地震の津波被害がもっとも深刻と予測されている静岡県には多くの津波伝承がある。
例えば、伊東市にはいくつもの「供養塔」(マップ5)があり、下田市に安政東海地震(1854年)による津波の被害者を弔う「津なみ塚」(マップ6)もある。
これらは死者を慰霊するためのものでもあるが、同時に津波被害の恐怖を伝え、自然災害を警告する役割も果たしている。
さらに、下田市にある「波除け地蔵」には、こんな津波伝説が宿っている。
「ある日、白いひげの老人が米屋に『津波が来るから逃げろ』と伝えた。しかし、米屋以外の村人は相手にせず、信じて逃げた米屋だけが助かった。この老人は津波を知らせる波除け地蔵の化身だったのである」
今でも海難事故を避けるために地元の漁師たちは、この波除け地蔵を日々拝んでいるという。
⇒大津波伝承ハザードマップ【東日本編】
【首藤伸夫氏】
東北大学工学部名誉教授。東大卒業後、旧建設省を経て津波研究に従事。日本の津波工学の第一人者として、津波に関する多くの学術書を執筆している
― 先祖伝来の[大津波伝承]に学べ【1】 ―
―[先祖伝来の[大津波伝承]に学べ]―
【関連キーワードから記事を探す】
「防災の仕事が9割」アイドル・時東ぁみが東日本大震災発生から15年目に思うこと。「バッグに充電器を入れるのも防災です」
人のいなくなった家に野生動物が…原発事故から11年でも故郷に帰れない「風下の村の人びと」
3.11から11年。「息をするのもつらかった」“名物女将”の喪失と再生
宮城県発YouTuber「ほーみーず」。被災当時、小学生だった彼らの支援策
災害発生時も頼りになる「Google Map」。オフラインでも使える
「津波の心配はありません」なぜこの言いまわし?気象庁や“言葉の専門家”に聞いてみた
鬼怒川水害と東日本大震災の津波の共通性とは?
被災地に生まれた防災教育というコンテンツ ~岩手県宮古市田老地区~
【チリ地震】日本まで津波が届く動きがよくわかる動画「沿岸地域の方は注意」
気仙沼復興商店街で「復興」の現実を実感せよ!【後編】
電気のプロが教える「災害時の備え」…太陽光+蓄電池を導入しても電気の正しい使い方を知らないと命取りに
「電気料金の高騰」「災害リスクへの備え」対策の新常識…“売電収入”減少でも太陽光発電設置が増え続けているワケ
3.11以降「大地変動の時代」に何が起きているのか? 地学で知る「災害列島」日本の正体
災害時、中年男性につきまとう「意外なリスク」。避難所で降りかかる“過酷な生活”とは
大きな災害の後、離婚相談は5倍に急増する!? 意外な形で浮気がバレるパターンとは?






















