被災地に生まれた防災教育というコンテンツ ~岩手県宮古市田老地区~

【週刊SPA!連載】
★週刊チキーーダ! 飯田泰之・荻上チキのヤバい研究報告書

~「学ぶ防災」が語り継ぐもの 岩手県宮古市田老地区~

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◆被災地に生まれた防災教育というコンテンツ

防災

ビデオを見つつ、澤口さんに質問をするふたり

荻上:防潮堤に上り、そこで津波を経験した人の話を聞くと、一言では語りきれない防潮堤の役割、地元の人たちの思いがわかるね。

飯田:各被災地で共通するのは、明治・昭和の津波の教訓を生かしきれなかったということ。高台移設で町が再建されていきつつも、世代が進むにつれ、海側に戻っていくこともある。体験をどう風化させずに残すのかは課題だろうね。

荻上:東日本大震災で多くの自治体でも寺や神社といったものの役割というのが見直されたよね。

飯田:寺や神社は大丈夫という言い伝えは、かなり正しかった。

荻上:先人たちは明確に、記憶に残すために、神話化したり物語化したり、逸話化したり。あるいは、迷信めいた伝説伝承として残すんだけれど、それが実際に機能した。

飯田:一方で、神話化や逸話化していることで「今、21世紀ですよ」「今は違いますよ」という反応をもたらすことがある。

荻上:近代は脱魔術化で、そうしたものを否定するという理解がされがちなんだけれど、魔術には魔術の機能が埋め込まれている。その機能を合理的に理解し直すこと、あるいは、再解釈することこそが近代なんだよ。でも、その機能を全否定することが退化、後退につながることもある、と。

飯田:神話をはじめ、前近代的なものも、当時は先端的な知識だった視点は必要だよね。

荻上:政治的課題とは別に、ある意味、文化的と言うか、語り継ぐことによって防災や減災の方法論を更新していく必要はあるね。

飯田:その意味でも「学ぶ防災」の意義は大きく、そして需要がむしろ増しているというのは興味深いよね。地域経済から見ても、被災前人口3000人という田老地区で、このツアーによってガイド6人の雇用を生んでいる。さらには、訪れた人が道の駅や直売所でお金を落としていくわけで、復興に必要なお金の流れをつくってるわけだから。

荻上:「学ぶ防災」の機能は3つある。ひとつは防災のために記憶を伝承し、対策を高じさせる機能。ふたつ目は雇用を生むことによって、新しい役割を持続することを実現したこと。そして、ツアー化により3000人の町に3年間で5万5000人の人が訪れてお金を落としているということ。町を支える観光産業になるのは難しいだろうし、20年後も続くかというとわからないけれど、今の被災地のひとつのモデルとなるのでは。

飯田:前回の三陸鉄道の回(http://nikkan-spa.jp/668813)でも話したけれど、防災教育、減災の知識の普及というのはひとつの定番のコンテンツとなりうる、ということを実感した取材旅行だったね。

【飯田泰之】
’75年生まれ。エコノミスト。明治大学政治経済学部准教授。「初夏は東北観光のベストシーズン! 実地調査のために高田に釣りに行きたいなぁ」

【荻上チキ】
’81年生まれ。評論家・編集者。『シノドス』編集長。「W杯のおかげで眠れない日々が続いておりましたが、ようやく眠れる時期に。今度の敵は熱帯夜」

<取材コーディネイト/土方剛史>

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