更新日:2012年03月09日 23:06

[大津波伝承]を破った地域は被害大

東日本大震災で多くの人の命を救ったとされる先祖代々語り継がれてきた大津波伝承。そこで、小誌取材班が全国各地に今なお残る大津波にまつわる言い伝えを徹底調査。実際に現地を訪れ、風化しつつある先人たちの津波警告をリポートする! ◆伝承が生かされる地域、生かされない地域
広瀬弘忠氏

広瀬弘忠氏

「大津波伝承は日常生活を送る人々の精神にも少なからず影響を与える」と話すのは、災害心理に詳しい安全安心研究センター・センター長の広瀬弘忠氏だ。 「石碑などの伝承文化は災害を身近なものに感じさせてくれるし、防災対策の意識を高めてもくれます。現代を生きる人々に『災害が来ても大丈夫だ』と心に安心感を与えてくれる一面もあるでしょう」  だが、残念なことにこうした先人たちの経験、知恵が生かされている地域は少なく、伝承が風化してしまっている。  宮城県仙台市にある「浪分神社」は、過去に襲った津波がここで分かれて引いたという言い伝えから建立された神社。この神社よりも下に家を建てるべきではないという教訓が込められていたが、現在は神社よりも低地に家が立ち並び、今回多くの犠牲者を出してしまったのである。  前述した静岡県内にある津波到達地や警告を伝える碑の下には、多くの家屋が存在する。30年以内に87%の確率で起こるとされる東海地震。その際、襲う津波の高さは10m超が予想されるが、先人たちの警告は生かされるのだろうか。 ⇒ 大津波伝承ハザードマップ【東日本編】 【広瀬弘忠氏】 元東京女子大学教授。災害心理に詳しく、現在は安全安心研究センターでセンター長を務める。著書に『人はなぜ逃げおくれるのか』『災害防衛論』(ともに集英社) ― 先祖伝来の[大津波伝承]に学べ【2】 ―
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