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コロナ破綻しそうな地方自治体、地銀とは…観光依存の町はヤバい

―[コロナ後の未来]―
 新型コロナウイルス感染拡大の長期化に備えて、政府は国民に対して「新しい生活様式」を取り入れるよう、呼びかけている。「もう以前の生活には戻れない」と言われているが、収束した後の世界はどう変わってしまうのか。
コロナ後の未来

コロナショックで外国人観光客が消えた北海道。道内には破綻リスクの高い自治体も多いが……(写真は札幌市の二条市場)

観光依存の町がヤバい!? 地方自治体と地銀の破綻

 今後、コロナショックによる税収減と、地域経済支援のための財政出動の増加により、複数の自治体が破綻する可能性がある。大手紙経済部記者は言う。 「首都圏でいえば、人口減少や市税収入の減少、高齢化に伴う社会保障費の増加により財政が悪化していた神奈川県三浦市では、コロナショックが基幹産業である水産業を直撃しており、税収減により瀕死状態に陥ることが確実視されている。また関西では、零細工場が多い東大阪市が、コロナ減産の煽りで税収が大幅に減ると見込まれている。  また、人口約5万人ほどの奄美市でもコロナ以前は人口の10倍近い観光客が訪れており、なかでもクルーズ船の寄港は年間10億円もの経済効果を生んでいましたが、それもストップ。財政悪化が心配されています」
玉城デニー沖縄県知事

休業要請に関して会見する玉城デニー沖縄県知事。同県は2~5月の経済損失額が1867億円に上ると発表。観光産業への依存が高いだけに被害は甚大だ

 一方、元衆議院議員で会計学者の桜内文城氏はこう話す。 「法人事業税の申告・納税のタイミングは、法人の決算月によるので、すぐに影響が出るわけではないが、観光業や水産業など、コロナショックの影響が大きい産業に依存していた自治体の地方税収は落ち込んでいくはず。地方自治法などでがんじがらめの地方財政制度で、唯一切り込めるのは一般行政職員の人件費。徹底した業務のIT化とAI導入で削っていくしかないでしょう」  地域経済の悪化で、自治体と同様に破綻危機が高まっているのが地方銀行だ。 「105行ある地銀の中で、まともに経営が成り立っていると言えるのは半分くらい。自己資本率8%以下の体力のない地銀は、コロナショックで大口融資が一件でも焦げつけば、破綻してしまう」  こう警告するのは、金融業界に詳しい経営コンサルタントの日沖健氏だ。とくに観光業への依存度が著しく高い地域にある地銀は、破綻リスクも高くなりそうだ。 「もうひとつ、破綻リスクが高いのは住宅ローンでイケイケどんどんだった地銀でしょう。コロナ禍で失業したり、給与が下がる人が増えれば、住宅ローンの滞納が続出することは容易に想像できる。さらに、政府による緊急経済対策のため数十兆円規模で新規発行される国債が、金利を数パーセント押し上げる可能性もある。そうなると、変動金利でローンを組んでいる人の滞納も続出するでしょう」  コロナ後の恐慌は、まず地方経済からやってきそうだ。 【桜内文城氏】 公認会計士・税理士。東大法学部卒業後、現財務省に入省。主税局係長、大臣官房文書課課長補佐などを歴任。新潟大経済学部准教授などを経て、衆参両院議員を一期ずつ務めた 【日沖 健氏】 日沖コンサルティング事務所代表。慶應義塾大卒業後、日本石油(現JXTGホールディングス)などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)など。 <取材・文/週刊SPA!編集部 写真/時事通信社> ※週刊SPA!5月19日発売号の特集「コロナ後の未来」より
週刊SPA!5/26号(5/19発売)

表紙の人/ 桜庭ななみ

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