同棲して半年でコロナ禍のカップル。秘密の社内恋愛が招いた誤算とは
まだまだ油断できない新型コロナウイルス。その影響は“感染”せずとも一般家庭の人々にしっかりと及び始めている。妻との軋轢や育児に疲れ果てる者、帰宅難民と化す者、子供を奪われそうになる者……。今、多くの人の“コロナ疲れ”が臨界点に達しようとしている。テレビでは報じられない、名もなき被害者たちに迫る!
セキュリティ関連の大手IT企業に勤める田中絵里さん(31歳・営業)は、昨年9月頃から同僚の男性と交際中。半年ほど前から会社から二駅の距離にある港区の1LDKの賃貸マンションで同棲生活を始めた。
「職場の同僚たちとクラブで遊んだ後、泥酔した彼の家に全員で行ったことがあって。それがきっかけで彼の家によく遊びに行き、2人で飲むようになりました」
付き合い始めてからはお互いの家で過ごす時間が増えるようになり、結婚を前提に同居を始めたという。
「周囲の人に打ち明けるタイミングもないまま、あくまで“聞かれてないから言っていない”というようなスタンスです。秘密にする理由はプライベートを持ち込まれて仕事のパフォーマンスを疑われたり、冷やかされたりするのが嫌だからです。実家が東京同士ということもあり、特に住所の届出などの事務手続きなどもしていないので総務にもばれていません」
そんな秘密の同居生活だが、新型コロナの影響で思わぬ展開になる。3月初めから二人の勤務先で全面的にリモートワークが導入されたのだ。
「もともと会社もコロナ禍以前からリモートワークやフレックスなどは取り入れていたので、私たちも以前からそうした会社の制度を活用していましたが、今は出社するためには役員の承認が必要になりました。この2ヶ月弱はずっと在宅です。お互い一人暮らしの設定なので、ミーティングがかぶるとウェブカメラに映らないように、トイレとベランダにわざわざ分かれて会議しています。最近は背景を変えるようになりましたが、お互いビデオ会議中はそーっと静かに歩いたり、声を出さないようにしたり、物音を立てないよう気を使います」
特に気を遣うのは同僚とのオンライン飲み会だ。
「どちらかが外から参加して、終わったら自宅に帰ってくるみたいな感じで面倒くさいです。ファミレスも自粛で遅くまでは開いていないし、声も出しにくい。とはいえ野外も夜は寒いのでちょっとした地獄です……」
共通の趣味である海外旅行も年内にいくつか計画していたそうだが、外食や外デートすらままならない今、お酒が入った勢いで仕事についての議論がエスカレートして、ケンカすることも増えた。
「少し手狭でも都心に住みたいと考えていましたが、仮に在宅勤務が今後メインになっていくなら会社から遠くても、部屋を完全に分けられるような広い間取りの物件に引っ越すのもアリかなと少し検討するようになりました」
最近は「彼氏とずっと一緒にいるのも気詰まりなので、たまにアパホテルの素泊まりプラン(1泊2500円)を利用している」という田中さん。
コロナ禍は幸せだったカップルにも思わぬ形で亀裂を走らせている。<取材・文/伊藤綾>1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
1LDKの賃貸マンションでトイレとベランダに分かれてビデオ会議
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ