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SNS精子提供の闇 ウソ経歴で女性のカラダ目的も…

 家族のあり方の多様性について見直されつつある昨今、第三者の精子による人工授精(AID)は不妊で悩む人にとって一つの希望となりうる。だがAIDは広まるどころか、減少傾向にある。不妊治療の専門家で、日本生殖医学会認定医の柏崎祐士氏は話す。 SNS精子提供の闇「自分の出自を知る権利が世界的に認められてきており、日本でもその方向で議論が進んでいます。この流れを受け、’17年に国内でAIDの約半数を手掛けていた慶應義塾大学病院がドナーとの同意文書に、『生まれた子が情報開示を病院に求めた場合、応じる可能性がある』旨を明記したところ、提供者がいなくなった。扶養義務を負う可能性が出てくるためです。以降、慶應義塾大学病院はドナー受け入れを中止しました」  そして日本産科婦人科学会などでは、生殖医療はがん治療などで生殖機能に問題を抱える人や戸籍上の夫婦に限定し、同性愛者への提供は原則行っていない。こうした背景から、SNSを介した個人間の精子授受が増えており、純粋なボランティア目的もある一方、トラブルの温床にもなっている。  約10年前から精子提供のボランティアを始め、4年前から精子提供ボランティアサイト「精子提供.com」を運営する西園寺優さん(仮名・30代)はこう話す。 「男性の態度や経歴を怪しんで、女性側が断る事例はあります。SNSは逃げることができますから、性的目的の男性はいると思います」  西園寺さんのサイトには1か月で15件の問い合わせが来る。既婚である西園寺さんの活動は妻公認であり、定期的な性病検査を受け、相手には学歴や身分などをある程度まで証明書とともに明かしている。サイト上でも、大学の卒業証書を部分的に公開している。

カラダ目的も横行。騙されて産んでしまった例も!

 だが当然、全ての提供者が誠実であるとは限らない。  前園エリカさん(仮名・36歳)は精子提供を謳うアカウントにコンタクトを取ったが、単なるナンパ目的の人物だったという。 「離婚経験があり結婚にはもう興味がありませんが、子供を持つことは諦められず、まずは軽い気持ちで問い合わせてみました。すると最初の返信で、シリンジ(膣に精子を注入するための注射器状の器具)は持っているかとしつこく聞かれました。  精子ならどれでも良いわけではないので、まずは対面してから決めたいと告げて会うと『シリンジに精子を入れるからホテルに行かないか』と誘われて。衛生的な問題は確かに引っかかるけど極端な話、駅のトイレでも可能なわけじゃないですか。執拗にホテルに誘ってくるので、逃げるようにして帰りました」  SNS経由で精子提供を受け、「経歴詐称」をされたまま出産してしまったケースもある。都内在住の既婚女性A子さん(35歳)はツイッターでの精子提供を通じて妊娠し、今年の3月に出産。相手の本当の経歴を知った頃はすでに妊娠後期だった。 「男性は京都大学出身の独身で、大手企業の社員証も持っていたので、すっかり信用してしまいました。しかし、蓋を開けてみると勤務先以外は全部嘘だったのです」  10年以上前に長男を出産して以降、第2子を望んでいたA子さん。不妊検査ではA子さんに問題はなかったが、夫は「不妊の原因は女性にあると考えている古いタイプ」で、さらにA子さんと長男にDVをすることもあり、長らくまともな話し合いができずにいたという。  それでも第2子を望んだ理由は、女性の言葉を借りると「(第2子を授かることで、夫婦を巡る)状況にプラスの変化を起こす最終段階」とするためだった。そうして思いつめていたところ、知人からSNSでの精子提供を教えられ飛びついてしまったという。 「夫のことは愛しています」と言うA子さん。東大卒でIQ130の夫に似た高学歴と背格好にこだわって探したところ、現れたのがB氏だった。そしてA子さんが望んだのはシリンジで注入する方法ではなく直接の性交渉。その理由について彼女は「自然妊娠で授かった第1子と差をつけたくなかったから」と、受胎方法への強いこだわりを話す。  男性とは週に2~3回性交渉を行い、「場所代」として総額15万円を手渡していたという。そして昨年6月に妊娠が発覚。夫とは日常的に性交渉していたため、妊娠について疑われることはなかった。男性を怪しむようになったのは、その後だった。 「連絡をしても乱暴な言葉で返信をするようになったので、反社会的な人物だったらどうしようと不安に思いました。それで社員寮に行って聞いたり、探偵を通じて調べると地方大学卒の既婚者で、国籍も中国だった。最初に知っていれば頼みませんでした」

双方ともに不可解な点 男性は他に下ネタ活動

 相手の男性B氏に事情を聞くと、このように話す。 「お互いの身辺を詮索し合わない約束だったし、大学も国立大であるとしか伝えてません。それなのに妊娠後も彼女から性的関係を求める連絡が執拗に来るので、適当に返事をしていたら、詐称されたと言うようになりました」  記者にスマートフォンを渡してまで、無実を訴えるB氏。そこに残っていたLINEのやり取りには、確かにA子さんからの卑猥な文言や、夫に対する不満を吐露する文言が多く残されていた。  B氏は「後悔しているので、二度と精子提供はしない」と話すが、彼の挙動にも“不審な点”が。記者が男性のツイッターを見せてもらうと、4~5個のアカウントを保持しており、その一つに、このような文言があった。 「果実感アップの僕の精子はいかがですか? 今ならなんとおかわり無料キャンペーンをやっておりますよ!笑」(原文ママ) 「在宅勤務暇なんだけど笑 誰か一緒にラブホのサービスタイムに行かない?笑笑」(原文ママ)  このアカウントの使用目的を聞くと、「会社の上司や仲間たちと飲みに行くと下ネタの話が出るのですが、辞書に載っておらず、中国人の自分には理解ができません。それで疎外感を覚え、勉強がてら下ネタをつぶやき言い合うアカウントを開設しています。実際には一度も会っていません」と話す。
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悲劇を防ぐためにも法整備が急務である
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