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SNS精子提供の闇 ウソ経歴で女性のカラダ目的も…

悲劇を防ぐためにも法整備が急務である

 双方ともに自己責任であるとはいえ、思惑と違う形で出産してしまったA子さんは罪悪感や後悔を一生背負っていくこととなり、代償はあまりに大きい。そして当然だが、最大の被害者は子供である。A子さんはB氏への訴訟を検討しているというが、類似のトラブルが起きた場合の対処について弁護士の藤元達弥氏は見解を示す。 「精子提供を受ける理由となった事項、そしてそれを詐称されたことを示す証拠があれば損害賠償請求は不可能ではない。ただ、このケースは女性が妊娠後も男性に関係を迫ったと見られる形跡が残っているようなので、そこは不利な事情になるでしょう。そして双方既婚者のため不貞行為となり、男性の妻はA子さんに賠償請求も可能。A子さんは、夫に知られたくないのであれば、男性を訴えることはやめておいたほうがいいでしょう」  同じく、弁護士の小林芽未氏は損害賠償請求の可能性について疑問を呈する。 「裁判所は性行為において避妊の有無よりも、性的合意の有無に重きを置いてジャッジすると思われます。性行為に合意があれば性的自由が侵害されているわけではないため、どの部分を損害とするかが争点となります。高学歴であると偽られて性行為をしたことについては、男性が高学歴でなければ性行為をしなかったといえるのであれば男性の不法行為が認められる可能性があります。女性側が男性側に性的な文言を送っていたのであれば、性行為の合意に高学歴が要素となっているとはいえず、女性に精神的損害があったことを認めるのは難しくなるでしょう」  そして、子供はそのままでいれば嫡出推定により女性と女性の夫の間の実子という扱いになるが、将来子供がどこかで真相を知った場合はどうなるのか。 「認知請求は子供の権利であるため、親が勝手に放棄することはできません。たとえ親が「認知はしない」と契約を交わしたとしてもその契約は無効となります。子供がどこかで生物学的父親を知った場合は、大人になってから自分自身で養父との間の親子関係不在の訴えを起こし、実父に対して認知を求めることができます」  望んだ妊娠ではなかったという理由で、女性が子供を乳児院に預けたり児童相談所経由で養子に出すことは可能なのか。 「おそらく現在は戸籍上の夫婦が実親となっているでしょう。その後特別養子縁組をすれば、実親との縁を切って養親の子にすることができますが、当然ながら夫の同意も必要です。児童相談所がもし何らかの経緯で婚外子であることを知った場合、事実を夫に伝えるかどうかは、児童相談所の裁量にかかってくるのではないでしょうか」  女性の夫は東大卒エリートで経済的にも問題がないため、特別養子縁組が認められるか否かという問題もある。女性がどこまで夫に隠し通せるかは未知数である。  前出の柏崎医師は、こうした問題を防ぐために、生殖医療に関する法を一刻も早く整備すべきと話す。 「世界的にも、性行為を通じたドナー提供は認められていません。情が移るなどさまざまなリスクがあるからです。SNSでの提供禁止や合法的な精子バンク設立に関する法整備を専門家会議や学術会議から厚労省にお願いしていますが、現状では後回しにされています」  法整備がなされない限り、似たような「悲劇」がどこかでまた繰り返されていくだろう。

諸外国ではドナーと子の親子関係不在を法的に保証

 諸外国では公的な精子バンクがあり、信頼性は各機関に委ねられるものの、顔写真と血液型、持病の有無などが確認できる。ドナーとの親子関係不在を法的に認めているためだ。一方、一部提供者の善意に頼るしかない日本では一人の男性が40~60人の子供に精子提供する例もあるが、拡大すれば血縁同士の結婚という問題も起こりうる。 取材・文/SPA!編集部
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