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『有吉の壁』でスベリ倒す、とにかく明るい安村の姿に勇気づけられる

文/椎名基樹

人生、死にたくなったら下を見ろ……

有吉の壁

『有吉の壁』公式サイトより

「人生、死にたくなったら下を見ろ、俺がいる」とは、全裸監督・村西とおるの言葉であるが、私は今こう言って自分を勇気づけている。「人生、死にたくなったら下を見ろ、安村がいる」。安村とは芸人の「とにかく明るい安村」のことだ。彼は収入面でも社会的地位でも私よりはずっと上にいると思う。しかし、私が勇気づけられているのは『有吉の壁』(日本テレビ系)でスベリ倒す安村の姿にである。 『有吉の壁』は貸し切った遊園地などを、有吉が練り歩くと、若手芸人たちがドラクエのモンスターのごとく現れて、お題に沿った芸を披露し、有吉は「○」と「×」の札で、その芸の合否を判定する、新しい形の大喜利番組である。  安村は番組出演者の中で、最も有吉が容赦なく「×」を出せる芸人である。つまり最も「スベリ芸」が完成されているのだ。安村自身も有吉のツッコミ待ちで、あえて自ら地雷を踏むネタを好んで披露する。 例えば、有名人の微妙な(つーか全く似ていない)扮装を披露するコーナーで、安村が選んだのはキムタクの娘のKoki,。そんなの安村だけでなく、見せられるほうも地雷を踏んでしまう。安村にはそんな「困惑上等」なパンクな姿勢があり、私は非常に共感する。

スベリ芸の芸人が最も目立っているお笑い番組

 しかし、さすがの安村もあまりの滑りっぷりに、後になって「やっぱりやめとけばよかった」と、後悔する事もあるようだ。そんな時安村は、有吉曰く「首が落ちちゃったのではないか」と思うくらい、うなだれているらしい。それでも毎週安村は、実際に眉毛を剃り落としたり、『押忍!!空手部』みたいな極端な剃り込みをおでこに入れたり、とにかく体を張って『有吉の壁』に挑み続けるのだ。うーん、痺れるぜ。勇気づけられる。「とにかく明るい安村」という芸名通りのなんとポジティブな男だろう。  テレビ番組の会議では、普通「裏を食っていない笑い」を心がけて制作に向かう。「裏を食っていない笑い」とはつまり「面白くないのが面白い」という構造になっていないということだ。しかし『有吉の壁』では、とにかく明るい安村、パンサー・尾形、ワタリ119など「面白くないのが面白い」スベリ芸の芸人が最も目立っている。そこにお笑い番組の純粋性が表れていると思う。
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1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』、週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』などを担当。近著は『オールナイトロング -私にとっての電気グルーヴのオールナイトニッポンとその時代』。Xアカウント @mo_shiina

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