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「即応予備自衛官」の待遇改善は進んだのか?給与の支払いまで半年かかった例も…

予備自衛官の給料

自衛隊

※陸上自衛隊公式Facebookより

「即応予備自衛官等」は、「災害派遣等で出頭した日で自分の指定されている階級の自衛官となる」ため、災害派遣時の給与は通常の訓練の報酬体系とは異なり、常勤の自衛官俸給表が適用されます。この金額は活動日数に応じて日割りで支給されるのですが、号棒の算定は社会経験の年数や内容を加味して決定する等、複雑な仕組みになっていました。  さらに、加算される経歴を確認するためには在職証明書など関係書類の提出が必要であるため、支給手続きにはかなりの時間がかかったのです。  例を挙げると、平成28年の熊本地震では、災害派遣活動に従事した即応予備自衛官の給与を支給するまでに半年以上かかったケースがありました。災害派遣後に各種書類を請求して一斉に手続きを行ったから時間がかかったわけです。  さすがにこの給与の支払い遅延は防衛省も改善が必要と考えてくれたようで、平成31年1月には「即応予備自衛官等の経歴の確認は、活動終了後ではなく訓練召集の機会に普段から実施する」よう各部隊に通達。  その後の令和元年東日本台風(台風第19号)では、召集解除後1か月から2か月以内に支給できているのだそうです。この7月の球磨川の豪雨災害についても、現在、給与支払作業が進めてられおり、来月中には支払い見込みだそうです。  給料は翌月現金支払いが一番ですが、それでも「半年後に支給」からここまで改善されたわけです。ここは素直に「よかった!」って喜びましょう。関係者の皆さま、さらにさらに、頑張ってくださいませ。

忍耐や犠牲を求めるのではなく

「自衛隊さん、ありがとう!」ネットには被災地を後にする自衛隊車両をお見送りする動画が溢れています。今や自衛隊は、日本中で信頼され愛される組織となりました。自衛官は自己犠牲の精神を持ち、表立って不満を口にすることはありません。でも、国や自治体、我われ自身がそれにつけ込んで清貧の美名の下に何かにつけて費用を削り「贅沢」を許さず、便利屋のようにこき使う風潮についてはぜひとも改めてほしいと思います。  結果として、現在、自衛官になる人は足りず、即応予備自衛官等に至っては必要数の半分の充足率です。米中が反目し合い、内外に緊迫した空気が流れる中で、国防の要であるはずの自衛官が絶対的に足りないという事実。自衛隊を「多くの人が憧れるような職場」にしなければ、国を守り切ることが危うくなります。政治的に声を上げることのできない自衛官に代わり、自衛隊の充足率を上げようという提言ができるのは、私たち「自衛官以外の人」です。トイレットペーパー自腹も固い床に雑魚寝も、自衛官は黙って耐えていたため、世論の後押しがあって初めて状況が改善されたのです。  自衛隊は私たちの最後の砦です。 「自衛隊さん、ありがとう!!」  その気持ちを予算や法整備、処遇の改善などの具体的な形にして届けようというのが私たちの活動の原点です。「よりよい自衛隊にしよう」という声がどんどん広がってほしいなあと思います。
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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