現役自衛官はなぜ勲章をつけていないのか?海外軍人と大違いの実情
「自衛隊ができない50のこと 42」
昭和21年から我が国は生存者への受勲を閣議決定で止めていました。昭和38年に受勲制度が再開され、平成15年には警察官や自衛官などの危険性の高い業務に対する枠ができ、その後、少しずつ拡大しているところです。今のところ現役自衛官は受勲対象とはなっていないため、高官でも現役の間は勲章を持っていません。海外へ派遣された自衛官はその派遣国の勲章を授与されている場合がありますが、我が国の勲章を持つ現役自衛官は皆無でしょう。
現役自衛官は勲章をもらえないなんて……
海外に赴任する自衛官は、在外公館を警備する「在外公館警備対策官」や軍事情報交換などを行う「防衛駐在官」など、様々な立場で在外大使館・領事館等で活躍しています。儀式やパーティに呼ばれた場合は原則、制服着用がマナーなのですが、たくさんの勲章を身に着けた外国の軍人たちからは、1つも勲章をつけてない自衛官が格下に見られてしまう可能性があり、国の事情とはいえ情けなくなることもあるようです。 日本では現役自衛官は勲章をもらえないという事情を外国の軍人たちは知りません。しばらく会話を交わして国の事情を説明すればわかってくれるでしょうが、誇り高い自衛官が初対面で格下に見られる屈辱はいかばかりかと思います。だから、自衛官は海外のパーティへの出席が苦手だと言うのです。 退官後にその功績を讃えられ勲章を受ける自衛官はたくさんいます。でも、残念なことにそれは退官後の話なのです。 そもそも、勲章は軍人、それも現役軍人の勇気ある行動に対して作られたものです。明治維新以降、最初の皇族以外の栄典の授与を受けたのは台湾出兵の指揮を執った西郷従道でした。軍人や軍属への栄典が「勲章制度」の始まりなのですから、勲章は現役自衛官にこそ授与すべきであると思います。現在の制度が歪なのです。たしかに、退官後に条件が合えば、勲章を受ける資格はあるでしょう。しかし、その時にはすでに自衛官ではありませんから、職務上の外国の軍人との交流も終わっています。現役自衛官が勲章をもらえないのは職務遂行時のスムーズな交流の壁にもなりかねず、とても残念です。 自衛隊は世界の軍隊から見れば明らかに「軍」そのものです。しかし、日本の憲法下の制度では「軍ではない」ことになっている。自衛官には他国の軍人と関係を良好に保つ任務もあるわけですから、勲章がないことで自衛官に恥ずかしい思いをさせてはいけないと思います。憲法9条の規定で「自衛隊」が合憲かどうかの議論があるために、現役自衛官には栄典を授与できないという判断なのでしょうか? そうであれば、この点でも憲法改正は必要だと思います【中部方面隊の活躍】
— 陸上自衛隊 中部方面隊 (@JGSDF_MA_pr) 2018年10月19日
第49普通科連隊(豊川駐屯地)本部管理中隊 小野内1尉以下7名の隊員は、平成30年7月豪雨に係る災害派遣からの帰隊途中、名神高速道路で発生した多重交通事故現場において人命救助活動等を実施し、京都府警察本部から感謝状を贈呈されました。 pic.twitter.com/h66QaUX05f
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
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『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』 日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる…… |
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