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米倉涼子も知らない、楽天が2020年「楽天モバイル」を始めた本当の理由

 突然ですがーー!!!!(楽天カードの川平慈英さん風に)、今日は楽天の業績について説明いたします。  新型コロナの感染拡大の影響で、世界的にネット通販事業やクラウド事業が大きく拡大したのは今更説明不要でしょう。それは日本も同様。この業界を牽引するのは、yahoo!でおなじみのZホールディングスと楽天の二社です。しかし、実はこの二社、コロナ禍で大きく差がついたことをご存知でしょうか。  2020年上半期、楽天は業績が伸び悩みました。それはなぜなのか? そもそも、その“伸び悩み”は楽天にとって本当に危機なのか?同社の財務諸表と今後の事業戦略をもとに、私、馬渕磨理子がその謎を3分で解き明かしていきましょう。
楽天モバイル

楽天モバイルHPより

足を引っ張っていたのは、モバイル事業だった

 まず、楽天の直近の業績を見てみましょう。中間決算を見ると、純利益が9年ぶりの赤字転落となっています。新型コロナの感染拡大の影響で、オンライン需要の高まりによりEC(電子商取引)需要は堅調なはずなのに、楽天の最終損益は275億円の赤字。いったい、なぜでしょうか。  背景には4月にサービスを開始したモバイル事業の大幅な赤字があります。米倉涼子さんのCMでおなじみの、第4の勢力と呼ばれる楽天モバイルです。ここでさらなる疑問が浮かぶはず。  なぜ楽天は堅調なECの売上を食い、大幅な損失を出すようなモバイル事業に投資するのでしょうか。その理由を知るには、楽天の現在の主力事業を知る必要があります。  現在、楽天の事業は「インターネット」、「フィンテック」、「モバイル」の3つのセグメントにわけられます。この詳細については、以前本連載で分析しています。(参考記事:「楽天」に未来はあるか?もはや通販の会社ではない)  そんな三つの柱を持つ楽天、8月11日に発表した決算ではモバイルセグメントが大幅な損失を出しており、基地局整備の投資がかさんだことから824億円の損失を出し、純利益は274億円の赤字に転じていることが発表されました。基地局の建設について、三木谷浩史社長は「基地局の建設は爆発的なスピードで進んでいる」と会見で述べており、従来の計画を大幅に前倒しし、来年のうちに電波の人口カバー率を96%に近づけたいと話しています。つまり、楽天は今後もモバイル事業を積極的に拡大させていく意向ということです。  そして、楽天はここからが本当の“始まり”ということをメッセージで伝えています。後述しますが、いま楽天がモバイル事業を始めるのは大きな理由があります。ずばり、クラウド事業という本丸を大きくする狙いがあるのです。

大企業が赤字になるときに注意すべきこと

 さて、ここまで楽天の業績が赤字であることはお伝えしていますが、その中身をもう少し詳しく見ていきます。実は、赤字がかさんだ理由は基地局の整備費用だけではありません。利用者獲得のためのキャンペーン費用の増加も利益を圧迫しています。  楽天モバイルは、6月30日には早くも100万契約を突破するなど、順調なスタートを切っています。特に、料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」の契約をしたユーザーは、300万人目まで1年間無料で利用できるキャンペーンを実施しており、これが大変好調なのです。また、このプランを契約すると、オリジナル端末の「Rakuten Mini」を1円で購入できるキャンペーンを実施しており、これらのコストが重くのしかかっています。  現在、楽天モバイルはこれらのキャンペーンのおかげで契約者100万人にまで広がっていますが、キャンペーン後にどのようになるかはわかりません。キャンペーンで新規獲得した利用者が、2年目に入っても継続するかどうかでモバイル事業の行方が大きく変わるのです。しかし、キャンペーンを打たなければソフトバンク、ドコモ、auには勝てません。楽天のようなメガベンチャーは、新規事業で負けることが許されないとき、大きなリスクを背負って大規模なキャンペーンを打つのです。
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順調なはずのECサイトだが…
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