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米倉涼子も知らない、楽天が2020年「楽天モバイル」を始めた本当の理由

楽天市場

ECがYahoo!より伸びていない。なぜ?

 そんな先行き不透明なモバイル事業に対し、楽天の意外な事実をお伝えします。順調なはずのEC事業の決算をYahoo!と比較してみると「とても良い」とは言えないのです。  Yahoo!、ZOZOなどを傘下にもつZホールディングスのショッピング事業の4-6月期の取扱高は85.9%増となっているのに対し、楽天は48.1%増。つまり、約1.8倍の差が開いています。これ、意外ではないでしょうか。  たしかに、コロナ禍で「楽天市場」や「楽天ブックス」など、ショッピングECの取扱高が伸びました。が、それ以上にZホールディングスでは、ZOZOの連結子会社化、PayPayモールの拡大といったグループ会社とのシナジー効果により、大きく業績を伸ばしていたのです。

楽天が目指す「モバイル通信業界のAWS」とは

 ここまで暗雲とも言える楽天の2020年の現在を振り返ってきましたが、楽天の未来について予想してみます。その謎は、同社のライバルでもあるAmazonを見ればクリアになります。  近年のAmazonと言えば、AWS事業の拡大が目を引きます。AWSとは、世界で最も包括的で広く採用されているクラウドプラットフォームのこと。現在のAmazonの事業の中でも、AWSは多くの営業利益を生み出しています。対して、現在楽天は「モバイル通信業界のAWS」を目指しています。  三木谷氏はかねてより、楽天モバイルは、あくまで入口であり、楽天にとって肝心なのは「RCP」(Rakuten Communications Platform)だと説明しています。三木谷氏は、RCPをAmazonの「AWS」になぞらえて、「RCPを世界中の通信会社などに提供し、モバイル通信業界のAWSを目指す」と話しています。ここに、楽天がモバイル事業へ参入した本当の狙いがあります。そう、楽天はRCPで世界を相手にしたプラットフォームビジネスを進めることが狙いなのです。

馬渕磨理子

楽天モバイルはまだ道半ば

 しかし、楽天がその世界のプラットフォームになるためには課題も山積みです。現状の楽天モバイルは、今の段階ではクラウドを軸としたプラットフォーマーにはなっていません。iCloudのように、ユーザー向けのクラウドサービスは未整備です。つまり、今はまだ単なる携帯電話会社の一つにすぎません。とはいえ、楽天モバイルの参入は歓迎すべきことでしょう。  既存の携帯電話会社3社だけでは、携帯料金は高いままで変わることはなかったはずです。楽天は、そのような業界に対して健全な競争原理を持ち込むことに成功しました。楽天モバイルが、消費者が満足できるサービスを提供し、第4のキャリアとしての地位を確立した先に、本当の実力が見いだせます。  そう、設立一年目の楽天イーグルスが田尾元監督を擁してぶっちぎりの最下位になったあと、星野監督を擁して日本一になったあの2013年を思い出してください。勝負はまだまだこれからなのです。
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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