『あつまれ どうぶつの森』『フォートナイト』で見えたヒットゲーム法則の変化
『あつまれ どうぶつの森』は現在、「ジェラートピケ」「ヴァレンティノ」といった有名ブランドや、キヤノン、小田急電鉄といった企業が、ゲーム内で自由に飾ったり、着たりできる「マイデザイン」を公開しPRに活用しています。メトロポリタン美術館、J・ポール・ゲティ美術館が収蔵品をマイデザイン化できるようにしたのも面白い試みです。また、米大統領選の民主党候補、ジョー・バイデン前副大統領が選挙活動の一貫として「TEAM JOE」といったロゴを公開したのも話題になりました。
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も
『フォートナイト』では今年4月に人気ラッパー、トラビス・スコットさんがバーチャルライブを開催。3日間で2770万人が視聴しました。8月には人気アーティストの米津玄師さんがバーチャルイベントを行い、こちらも大きく報道されました。
ゲームを遊べば現実の世界へつながり、さらに楽しみが先へ先へと広がっていく。ゲーム世界に、TwitterやLINEのようなコミュニケーションツール、YouTubeのような動画サービスやライブストリーミング、アマゾンや楽天といったショッピングモールの役割を取り込んでいくことも可能でしょう。『あつまれ どうぶつの森』はファッションやアートの分野で特に注目されていますが、今後、料理やフィットネス、スポーツ中継などに強みを持ったタイトルも登場するかもしれません。
こうなると、各タイトルは発売時の作品のクオリティよりも、発売後のイベント展開やどのように現実世界と結びついていくかが重要視されてきます。この点は継続型のスマホアプリと似ています。
思い出されるのは、2003年に運営を開始して一世を風靡したオンライン上の仮想世界「セカンドライフ」。それがよりカジュアルになり、“遊び”にフォーカスしているのが『あつまれ どうぶつの森』のプラットフォーム化の特徴と言えるでしょう。「もうひとつの人生」というよりは、現実とゆるやかに結びついている、楽しみが詰まったアミューズメントパークのイメージです。
テレビゲームは「遊び」から「ツール」へ。「作品」から「場」へ。売り切りの作品型コンテンツも根強く支持され続けるとは思いますが、テレビゲームが担う役割は少しずつ変化していきそうです。
「プラットフォーム」や「場」として考えると、ヒット作の指標も売上本数ではなく、どれだけアクティブユーザーを抱えているかといった数字が重要になってきます。参加企業からスポンサー料を取ったり、イベントを開催する場所代を徴収したりと、どこから収益を得るかという構造も各タイトルの戦略の一部となるでしょう。『あつまれ どうぶつの森』の大ヒットをきっかけに、テレビゲームがどこへ向かうのか、気になるところです。1
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