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“隠れトランプ信者”がカギを握る。トランプ劣勢でも逆転がありえる理由

両候補の政策的な違いは?

横江公美

横江公美氏 写真/朝日新聞社

――トランプとバイデン両候補の政策的な違いは? フクシマ:バイデン候補の優先課題は大きく5つ。コロナ対策と経済の回復、BLM運動のきっかけとなった格差問題の解決、環境・気候変動問題への対処、そして国際社会におけるアメリカの地位回復です。私はバイデン陣営と頻繁にやりとりしていますが、コロナ対策はグローバルな課題なので、アメリカだけではなく、他の国と協力しながらワクチン開発などを進めるべきだというスタンスです。トランプ大統領が脱退を決めたWHO(国際保健機関)への参加も当然含まれます。これは、5つ目の国際社会におけるアメリカのポジションにも繋がることです。 トランプ政権ではWHOのみならず、パリ協定やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱を決定したうえに、NATO(北大西洋条約機構)を軽視したことで、欧州諸国との関係が悪化しました。アメリカの調査機関であるピュー・リサーチ・センターの調査によると、世界各国のアメリカに対する信頼度はトランプ政権下で大幅に低下しています。だから、バイデン候補は、「私が大統領になれば就任1日目に同盟国のリーダー一人ひとりに電話して、『アメリカは国際社会の一員として復帰しました』と伝える」と言っているんです。 横江:ただ、バイデン候補の政策集を見ても、ほとんど外交政策については触れられていません。日本に関する記述は「日本、韓国、オーストラリア、その他のアジアの民主主義国との同盟関係を強化し、イスラエルの安全保障への鉄壁のコミットメントを維持する」の1か所だけ。しかし、中国に対しては知的財産権が侵害され続ける現状や中国国内における人権侵害などに対して同盟国とともに解決にあたる一方、保護貿易主義ではなく、対話と貿易促進による関係の再構築を進めるという姿勢です。

バイデン政権でジャパン・パッシングの可能性?

横江:’16年の大統領選挙をサイバー攻撃で妨害したロシアのほうを明らかに敵視しており、対中姿勢はトランプ政権に比べるとソフトになることが予想されます。副大統領時代には息子のハンター・バイデンを連れて訪中し、その息子が直後に中国政府系金融機関が株主として名を連ねる中国の投資会社の役員を務めていたことなどを指摘しながら、トランプ陣営は「オバマ政権時代にバイデンが中国に融和的な政策をとったのは、ハンターがビジネス面で中国政府から便宜を図ってもらっていたためだ」と追及してきました。私はバイデン政権が誕生すれば米中関係は改善どころか急接近し、かつてのクリントン政権時代のように“ジャパン・パッシング”が起こる可能性もあるのでは?と見ています。 フクシマ:まず、ハンター・バイデンの疑惑についてアメリカの大手メディアは、情報源がトランプ支持者に限られているため情報の信ぴょう性を疑問視しています。そのため、トランプ支持者が注目していることは事実ですが、それ以外の国民の関心はさほど高くありません。 むしろ、バイデン陣営は、トランプ大統領の中国の銀行口座や、アメリカへの納税が少なく、中国政府へ納税している事実について指摘しています。米中関係については、バイデン政権下でも劇的に改善することはないでしょう。トランプ政権以前からアメリカの対中姿勢は厳しくなっているからです。 ただし、バイデン政権では中国は「競合」ではあるけれど、「敵」ではないと考えています。気候変動など協力できる課題では協力する姿勢をとっています。日米関係は横江さんが言うような事態に発展する可能性は排除できませんが、バイデンの政策は二国間だけでなく、多国間で考えており、二国間の問題に加えて地域(中国、北朝鮮など)やグローバルな気候変動などの課題での協力を日本に求める可能性が高いです。 ここで重要になってくるのが、日本側の姿勢です。たとえば、バイデン政権に対して「一緒にWTO(世界貿易機関)の改革に取り組もう」などと提案すれば、アメリカは歓迎するはずです。
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トランプ大統領の政策達成率は、歴代政権を見てもトップクラス
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隠れトランプのアメリカ

コロナ感染から奇跡のカムバックでトランプが勝つ!?
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