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「天井の穴から毒ガスまかれた」コールセンターのトンデモ客たち

 対面接客の店舗ならば、自身がお店に出かけた時に「おかしな客」に出くわすこともあるが、コールセンターのトンデモ客は、なかなか外ではお目にかかれない。今回は、そんなコールセンターのトンデモ客のエピソードをご紹介する。 bell001

どこにも転送できない電話

 私が、とある地方のガス会社でコールセンターとして働いていたときのこと。私の仕事は、一次窓口と呼ばれるものだった。料金に関する問い合わせや修理の予約、引っ越し時のガス開栓に関する問い合わせや緊急のガス漏れ対応に至るまで、顧客のさまざまな要望を聞いて専門の部署に割り振っていくというもの。  そのため、いわゆる「トンデモ客」は電話を転送した先の部署で大いに力を発揮するようで、私の勤務していた部署は、割合としては平穏に過ぎる日々が多かった。それでもある日、どこにも転送できない電話がかかってきた。 「私の部屋の天井に、穴が空いてるでしょ?」というご老人の女性と思しき第一声。  唐突であるばかりか、「でしょ」といわれても正直に言えば「知ったこっちゃない」である。しかし、そこは仕事。「穴…で、ございますか」と落ち着いて返答をする。  伝わらなかったことがわかり、その女性が別の言い方に変えてくれるかと思ったが、そう甘くはなかった。「私の部屋に、あ!な!が、空いてるでしょ?って!」ときた。聞こえなかったわけではないし、その証拠にしっかりと復唱している。復唱はコールセンタースキルの基本のキ。

復唱で話題を掘り下げていくと……

 私は、話が前に進みそうにないことを悟り、展開を作ることにした。「かしこまりました。それでは先に受付をさせていただいてよろしいでしょうか」と、女性の名前と電話番号を伺い顧客情報を確認した。  女性は、特におかしな部分もなく自身の情報をこちらに伝えてきたが、すぐに「私の部屋の天井に、穴が空いてるじゃない?」と、また始まった。私はひとまず「はい」とだけ返答し、女性が言葉を継ぐのを待つ。すると女性は「泥棒に入られたのよ」と続けた。  何事だろう。泥棒に入られて、110番ではなくガス会社に助けを求めているのだろうか。お門違いとは思いながらも、さらに「泥棒に入られたのでございますね」と、私は復唱で掘っていく。
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女性がガス会社に電話をかけてきた真相は
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