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取り調べ中にパンツの中から大麻が…熱血弁護士の奮闘劇<薬物裁判556日傍聴記>

弁護人の言葉に込められたメッセージ

 略歴を鑑みても「素行不良」の誹りはまぬがれないでしょう。しかし、この被告に対して、ここから弁護人が誘導尋問するように、二人三脚で伴走します。 弁護人「君が持っていた大麻、これは5月にどこで買った大麻?」 被告人「新宿です」 弁護人「5gと調書に書いてあったけど間違いないか?」 被告人「はい」 弁護人「何回くらい使った?」 被告人「一概には言えないですけど、1gにつき12、13回くらい」 弁護人「12、13回も使えるの? そのパイプも一緒に押収されたよね?」 被告人「はい」 弁護人「使い方は、パイプで吸うだけ?」 被告人「いえ」 弁護人「色いろな使い方があるんだよな? どんな使い方があるんだ?」 被告人「巻紙に巻きたばこのよう吸うこともあります」 弁護人「巻きたばこのようにして使う時と、パイプで使う時とは、使用量っていうのは違うのかな?」 被告人「はい。パイプで吸う場合は0.2g位で、巻きたばこにして吸う時は、0.8~1gを使います」 弁護人「すると、巻きたばこで吸ったら4、5回くらいでなくなっちゃうわけか?」 被告人「はい」  一口に大麻が5gというが、実際に使用するとなるとどの程度の回数になるのか。「4、5回くらいでなくなっちゃうわけか?」の行間には「常習性はないわけだよな」というメッセージが込められているかのようです。

弁護士と被告のスタンスや関係性が顕著に

 そして、こういったやり取りは本法廷において終始続きます。 弁護人「それで、この大麻を最初に吸ったのはいつ頃?」 被告人「中学1年くらい」 弁護人「それからずっと吸ってたの?」 被告人「いやずっとではないです。やめたり、やめなかったり」 弁護人「うん。ここ1年だと、どれくらい?」 被告人「ここ1年は数えるくらいですかね。その7月上旬に買ったのが2回目くらい。やめてて」 弁護人「やめた期間ってのはどれくらいあるの?」 被告人「2、3年」 弁護人「どうしても大麻がなきゃ毎日過ごせないってわけじゃないんだな?」 被告人「はい」 弁護人「うんうんうん。中学の時、初めて使ったのは、これはイタズラだよな? 中学時代なんてのは、だいたいそうだし」 被告人「はい。好奇心というか」  このやり取りには、この法廷での弁護士と被告のスタンスや関係性が顕著に出ているように思えます。「心証が悪いのは仕方ないが、フタを開けてみればそれほどのことではないよな」と伝える意図です。
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常習性をやんわり否定していく
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自然食品の営業マン。妻と子と暮らす、ごく普通の36歳。温泉めぐりの趣味が高じて、アイスランドに行くほど凝り性の一面を持つ。ある日、寝耳に水のガサ入れを受けてから一念発起し、営業を言い訳に全国津々浦々の裁判所に薬物事案の裁判に計556日通いつめ、法廷劇の模様全文を書き残す

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斉藤さんのnoteでは裁判傍聴記の全文を公開中。
note(https://note.com/so1saito/n/n17794fda4427
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