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取り調べ中にパンツの中から大麻が…熱血弁護士の奮闘劇<薬物裁判556日傍聴記>

過去の素行についても掘り下げる

 弁護士はさらに、過去の素行についても掘り下げます。 弁護人「あの、検事も冒頭陳述で言っているけど、少年院に入っていたんだって?」 被告人「はい」 弁護人「少年院に入った罪名は、私としてはあまり見たことがない罪名なんだよ。『詐欺 借用 未遂』と書いてあるんだけど、あんまり見たことのない罪名なんだよな。私からすると」 被告人「はい」 弁護人「何をやった?」 被告人「あんまり覚えていないですけれど。無銭飲食じゃないですけれど、タクシーの金を払っていなかったりとか…」 弁護人「それで、ちゃんと後で払いますって弁解したから?」 被告人「たぶん…そうだったんだと思います」 弁護人「うん。未遂の意味はね」 被告人「はい」 弁護人「少年院は教育のためだけど、刑務所はそうじゃないって前に言ったよな? 私」 被告人「はい」 弁護人「うん。留置されてみて、それは感じましたか?」 被告人「はい」 弁護人「うん。今回結構留置場では親切にしてもらったみたいだけれども、だからといって長居したい場所ではないわな?」 被告人「はい」  この後、被告が逮捕直前に無断欠勤したまま行くのをやめた解体屋が改めて身柄を引き受ける旨を確認し、弁護人による被告人質問は終わります。 弁護人「2度と薬物だけじゃなくて、刑事事件に関わる事はないと、約束できるか?」 被告人「はい」 弁護人「終わります」

検察はそんなに甘くない

 しかし、当然ですが検察はそんなに甘くありません。被告は明らかに犯罪傾向を持つ人物だと断じます。 検察官「それでは本件に対する検察官の意見を述べます。まず事実関係ですが、本件は取り調べ済みの各証拠により、その証明は十分であると考えます。そこで情状関係について述べます。本件は大麻により得られる薬効を得る目的での犯行でありまして、もとより酌量の余地は全くないといえます。  また、狡猾な対応で、大麻への親和性も見られます。被告人に前科はございませんが、かねて詐欺などによる中等少年院送致歴などがあったなかで、成人後まもなく本件犯行に及んでおり、下着内に隠匿しており、警察官への発覚を免れようとするなど、対応は狡猾であり、“規範意識の鈍麻が著しい”と言えます。  大麻の所持量も少なくないうえ、使用済みの残りが付着したビニール袋の量にも鑑みれば再犯の恐れも高いと言えます。以上から被告人の刑事責任は重いと言わざるをえません」  ということで、裁判官による判決は大麻取締法の条文通りになりました。 裁判官「それでは直ちに判決の言渡しを行います。主文、被告人を懲役6ヶ月に処する。この裁判が確定の日から2年間、その刑の全部の執行を猶予する。さいたま地方検察庁で保管中の大麻2袋、平成29年xx検領第xxxx号符合1、2を没収する。なお訴訟費用がありますが、これは、あなたには負担をさせません。もう1度言いますね。懲役6ヶ月です。それから2年間の執行猶予と。それから大麻がありますけど、これは没収するという判決です(後略)」
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裁判官が更生を促す言葉を
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自然食品の営業マン。妻と子と暮らす、ごく普通の36歳。温泉めぐりの趣味が高じて、アイスランドに行くほど凝り性の一面を持つ。ある日、寝耳に水のガサ入れを受けてから一念発起し、営業を言い訳に全国津々浦々の裁判所に薬物事案の裁判に計556日通いつめ、法廷劇の模様全文を書き残す

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斉藤さんのnoteでは裁判傍聴記の全文を公開中。
note(https://note.com/so1saito/n/n17794fda4427
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