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「田中角栄」の裏に埋もれた戦後最高の総理大臣とは/倉山満

イイトコなしの日本が今も生きていられる財産を残した池田勇人

 しかし歴史を知ればわかりますが、この池田勇人こそ戦後最高の総理大臣です。日本を先進国にしたのは池田です。いくら陰りが見えたと言っても、日本は世界の中では経済大国です。われわれ現代日本人が、いま生きていられるのは、すべて池田勇人のおかげです。今の日本はと言えば……。  戦争で負けて、すべての周辺諸国の靴の裏を舐めて生きている国に転落。  慢性的なデフレ不況が三十年も続いている。  日本政府は、災害対策もまともにできない。  自民党に投票したくないが、野党はもっとひどい。  トドメにコロナ騒動。  敗戦で軍備を取り上げられ、取り柄のはずの経済もダメになり、災害対策もマトモにできない。それでも何とか生きてこられました。  結局、今も日本人は、池田勇人の遺産を食いつぶしているのです。これだけイイトコなしの日本でも生きていける財産を残してくれた、偉大な総理大臣こそ池田勇人なのです。

池田が長期政権を築いていたら、間違いなく日本は大国に戻っていた

 一部のマニア、もとい学者と言論人の中には、「それまでの歴代総理は押し付け憲法を何とか改正して日本を自主独立の国にしようと努力していた。ところが池田が憲法改正を封印してしまった。池田なんて日本人をエコノミックアニマルにしてしまった元凶ではないか」と言い出す人もいます。  まったく違います。
池田勇人とその時代

在任中に亡くなってしまったと言っても過言ではない池田勇人は自伝が残っておらず、池田の側近であった伊藤昌哉(通称ブーちゃん)による『池田勇人とその時代』(朝日文庫、初版は『池田勇人その生と死』至誠堂、1966年)が数少ない伝記となっている

 史実の池田は、志半ばで病に倒れました。しかし、健康に恵まれ、佐藤栄作や安倍晋三のような長期政権を築いていたら、間違いなく大日本帝国は復活したでしょう。  池田と言えば自ら「経済の池田」を名乗りましたが、池田にとって経済は手段にすぎません。池田の真の目的は、大国に戻ることでした。  まず経済、国民に飯を食わせる。そして戦争に負けた日本人に、真っ当に働けば真っ当に評価される社会を用意する。そして世界の誰にも媚びない国になる。知られざる戦後最高の宰相、それが池田勇人なのです。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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