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皇位継承と男女平等は無関係だ/倉山満

皇位継承と男女平等は無関係だ

 昔から「男女平等だから、女性天皇・女系天皇を認めるべきだ」との議論が人口に膾炙(かいしゃ)している。しかし、皇位継承と男女平等は、何の関係もない。仮に皇室に男女平等を持ち込むなら、「皇后に男がなれないのはけしからん」とでも言うのか。これは、常識の問題だろう。

「平民」であることを理由に当時の旧皇族や旧華族から強い反発を受けながらも、1959年4月10日、当時皇太子だった上皇陛下とご結婚された美智子さま 写真/産経新聞社

 日本の歴史に男女不平等が無かったなどと言えばさすがに大嘘だが、皇室が「男女分業」によって形成されてきた面もまた真実である。むしろ、皇位継承においては“男性排除”の原理が貫徹しているのである。

なぜ、皇位(天皇の地位)は世襲なのか

 まず誰もが思う疑問、その一。なぜ、皇位(天皇の地位)は世襲なのか。政治が安定するからだった。  中華帝国が典型だが、誰でも実力で帝の位に就けるとしよう。政治の戦いは激烈になる。古代中国で漢王朝を打ち立てた劉邦は、農民の出身から皇帝に成りあがった。歴代中華王朝には外国人が打ち立てた王朝すら多い。トルコ人の唐、モンゴル人の元、満洲人の清、などなど。つまり、中国人のみならず、その時代に生きている人ならば誰でも皇帝に成るチャンスがあることになる。  それに対し、世襲の場合はそうはいかない。「一番偉い人」になれる可能性は限られる。だから歴代中華皇帝は、自分が王朝を打ち立てれば、世襲制を導入し安定化をはかり、王朝が弱体化したら誰かがとってかわった。選挙が導入される前、政治の決着は殺し合いで決めた。  近代において、長く世襲を続けた王室はその国の伝統として尊重されるようになった。そして、権力を振るわない代わりに責任を負わせない、立憲君主制が導入され今に残る。我が皇室は公称2683年の間、一度も途切れたことが無い世襲の伝統を誇る。また、「一番偉い人が権威として君臨するが、権力は振るわない」という意味での立憲君主制では、世界史最長不倒で最古の王朝だ。
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多くの日本人は女性天皇(女帝)と絶対にやってはいけない女系天皇の区別もついていない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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