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「田中角栄」の裏に埋もれた戦後最高の総理大臣とは/倉山満

 長期にわたって停滞し続ける経済に、追い打ちをかけるコロナ禍。この“イイトコなし”な日本で次なる首相になるのは誰か、注目が集まっている。
自民党総裁戦

「総裁選2021」(画像:自由民主党公式HPより)

 そもそも、そんな状況下でも日本がギリギリ踏みとどまっていられるのは「『池田勇人』のおかげ」と述べるのは憲政史家の倉山満氏だ。池田こそが戦後最高の総理大臣だと倉山氏は言う。なぜ、その功績を聞かれても答えに詰まってしまうような池田が、「戦後最高の総理大臣」なのだろうか――?(以下、倉山満著『嘘だらけの池田勇人』より一部編集の上、抜粋)

戦後最高の総理大臣と言えば、吉田茂か、田中角栄か

 戦後最高の総理大臣と言えば、古くは吉田茂と相場が決まっていました。今だと田中角栄でしょうか。  吉田は敗戦後の混乱期に、横暴極まりないGHQの圧力に対し、よく立ち向かいました。なにより日本を独立に導いた功労者ですから、批判したい点も山のようにありますが、ある程度の高評価は納得できます。  しかし最近は、なぜか吉田以上に田中角栄の評価が高く、角栄の本を出せば売れる「角栄産業」と言われるほどの大人気ぶりです。生前の角栄は、ロッキード事件など汚職で真っ黒の金権政治家として、およそマトモなオトナが名前を口にするのも憚られるような汚水の臭いがする政治家でしたが、今となってはその強引な政治手法が「強い政治家だった」と美化されて、意味不明な感慨が人気を呼んでいます

現実の角栄は高度経済成長の遺産を食いつぶしただけの無能な政治家

 現実の田中角栄なんて、所詮は高度経済成長の遺産を食いつぶしただけの無能な政治家なのに、「日本の経済が一番立派な時代を作った立派な総理大臣」みたいな間違った歴史認識が蔓延しています。 「田中角栄が日本の絶頂期の高度経済成長を築いた」「田中角栄こそ戦後最高の実力政治家だ」などの誤った認識は正されなければなりません。  もちろん、人間の評価に百点も零点もありません。角栄の凄さはナンバー2だった時です。角栄は池田勇人内閣で大蔵大臣を三度も務めました。だから高度経済成長をけん引した政治家のイメージが出来上がったのですが、実際の角栄は「池田に使われていなければ何をしでかすかわからない人」にすぎなかったのです。角栄ファンには申し訳ないですが、はっきり言います。この本では角栄なんか、取り上げる価値すらありません。本書では脇役としてのみ登場します。田中角栄なんぞを戦後最高の総理大臣だと言っていれば、未来永劫、日本人は負けっぱなしの民族で終わるでしょう

吉田と角栄に挟まれ、忘れられた存在の池田勇人

 さて、そんな吉田や角栄に対して、池田勇人の評価です。 【通説】 池田勇人、誰それ? 日本人をエコノミックアニマルにした人?  一時期、『週刊モーニング』で池田勇人を主人公にしたマンガ『疾風の勇人』が連載されましたが、打ち切りになりました。しかも、今は同じ作者の大和田秀樹先生が、『角栄に花束を』を描いています。池田が戦後日本人に、いかに認知されていないかを、悲しいほどに物語っています。
疾風の勇人

大和田秀樹氏による『疾風の勇人』(講談社)

 池田は、吉田と角栄の間にあって、忘れられている存在と言ってもいいでしょう。
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日本が今も生きていられるのは、池田の遺産のおかげ
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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