ワンクリック詐欺サイトの電話番のおっさんに聞いた、2021年の流行語大賞
さて、例年のことだけれどもこの「おっさん流行語大賞」は詐欺を働く悪徳業者に電話をして流行語を聞き出すことで締めるのが定番になりつつある。今年もそのようにしようと思ったが、どうやらこの2年の間にそういった悪徳な詐欺サイトが死に絶えたようで、僕の手持ちのストックがなくなってしまった。電話自体が通じないか、全く別の業者になっているかだ。どうやらこういった悪徳なことは何年も継続してやるものでもないようだ。回転がとても速いみたいだ。
ただ、これはあくまでも前回の調査で対象となった業者に関してである2年前の時点で僕の手持ちだった業者が壊滅しただけで、あいかわらずそういった業者は跋扈しているのが現状だ。
新たな業者を発掘すべく、5000円くらい騙されて振り込んだら、そらカモが来たぞと多数の悪徳業者がコンタクトしてきたので、それをもとにアンケートを行った。
5000円の元手がかかった調査ということを肝に銘じて欲しい。
具体的には、けっこうエロい感じの闇のマッチングアプリがあり、そのアプリを使えば誰でもセックス可能というものだ。会った瞬間にセックスできるアプリらしい。すごいアプリがあるものだ。
ただ、その闇アプリを得るには特定のサイトに登録が必須らしい。登録無料なのだけど、登録しても闇のアプリは手に入らない。それどころか登録と同時に利用に同意したことになり、利用料がかかるというものだ。
「いやね、利用料は必要なわけですよ」
「じゃあ解除します」
「いやね、それだと解除料がかかるわけですわ、うちも慈善事業じゃないんで」
「そんなあ」
「とにかく払ってもらえませんかね」
こういった流れの中で突如として「今年の流行語はなんだと思いますか?」とアンケート調査を実施した。結果は以下の通りである。
1.金払え
2.なんとかなりませんかね
3.こっちも困っているんですよ
4.払わないと職場やご家庭にご迷惑をおかけになることになりますよ
5.こちらは法的処置でもかまわないんですよけどね
しっかりとお仕事をされているようで安心した。心なしか、
2年前の調査より全体的に言葉遣いがまろやかになっているように感じた。以前はもっとこう、殺すぞ、みたいな粗暴な言葉も見られたが、今回はなかった。
逆にこちらが気にしてしまって、次のような質問をしたくらいだ。
「こう殺してやるとかそういう脅しはないんですか?」
「ないですね。こちらは脅迫するつもりはないですし、いまは録音もされやすいですしね」
とけっこう親切に答えてくれる人だった。
「殺すとまでいかなくとも、たとえば鉄アレイで殴ってやるとかそういう過激なことはいわないんですか?」
「ないですね。個人的には
鉄アレイなら殴るより、着払いで送るとかそういう嫌がらせをしたいですね。しないですけど」
「あ、そういうもんですか」
「店で一番重いやつ」
「それは鉄アレイの代金自体がけっこうなものになってしまいますね」
「たしかに」
「ははははははは」
みたいに和気あいあいと盛り上がってしまった。とにかく、こういった悪徳業者もあまり直接的で乱暴な言葉遣いをしなくなったようだ。
ということで2021年、おっさん流行語大賞は「鉄アレイ」に決まりました。2022年はどんなおっさん流行語が飛び出すか。1年後が今から楽しみだ。
ロゴ/ヒールちゃん(
@heelhell)
テキストサイト管理人。初代管理サイト「
Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「
おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(
@pato_numeri)