更新日:2021年11月11日 13:45
エンタメ

ピンサロで流れる音楽にも詫び寂びがあるという話

【おっさんは二度死ぬ 2ndseason】

第10回 ピンサロの侘び寂び

   ピンサロに命を捧げた男がいる。  僕の友人なのだけど、この世のすべてはピンサロに始まりピンサロに終わると真剣に論じる男だ。「侘び寂び」という言葉は美意識を表しており、閑寂の中に奥深さや豊かさを感じる意識のことを指す。日本庭園の枯山水の中に豊かさを見出す美意識などがそれにあたる。  そもそも「侘び」と「寂び」は別の言葉であり、それを合体させた言葉である。その「侘び寂び」と「ピンサロ」は通じるものがあり、「侘び寂び」ではなく「ピンサロピンサロ」でもいいくらいだと彼は主張する。もう思想が尖りすぎていてわけが分からない。  ピンサロとはどんなものであるか。それをこの日刊SPA!読者諸兄に説明するのは釈迦に説法というやつだろう。諸兄ならみんな熟知しているはずだ。ただ、何かの間違いで迷い込んでしまった人がいたら困るので、本当に簡単に説明させてもらう。

ピンサロの9割はユーロビートを流している

 ピンサロとは、正式名称をピンクサロンという。ピンクなサロンだ。発祥は1960年ごろとされ(諸説あり)、比較的に軽い性的なサービスを伴う風俗店という理解でよい。地域や時代によって若干の違いはあるものの、安価な値段で軽めのサービスを提供する風俗店だ。ちなみに僕が住む八王子のピンサロは時間帯によっては5,000円程度で楽しむことができる。  そのピンサロの最大の特徴は「個室じゃない」という点だろう。これも地域によって少し異なるが、パーティションで区切ったり、背もたれの背が高いソファーで区切ったりと疑似的に客と従業員だけ個室っぽい空間を作り出しているが、基本的には1つのフロア内で複数の性風俗的なサービスが展開される。  そこで問題となるのが声である。フロアには他の客がいるわけで、ブースに分けられているし店内は暗いので視覚的には守られている。見られる心配はそうそうないというわけだ。ただ、音だけは別だ。そのような簡易的な仕切りでは筒抜けになってしまう。こちらの性的な音声が筒抜けになるのも恥ずかしいし、知らない人の性的な音声もできれば聞きたくはないものだ。別の席の女の子の喘ぎ声ならまだしも、おっさんの喘ぎ声だったら目も当てられない。いや、耳も当てられない。  それを防ぐために、多くのピンサロでは大音量で音楽が流されている。そして、その大部分がユーロビートであると識者(友人)は語る。この世の中にどれだけのピンサロがあるのか分からないが、識者(友人)の経験から算出すると、約9割はユーロビートを流しているらしい。
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おっさんの喘ぎ声を遮断できるという利点
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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