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三越伊勢丹6年3ヵ月、高島屋は…コロナ後の“百貨店の寿命”をガチ試算

三越伊勢丹は販管費をどう抑えたのか?

高島屋 そこで気になるのは「では、どうやって?」という問いです。三越伊勢丹は人件費の削減、広告宣伝費はデジタル化するなどして大幅な経費削減に成功しました。特に人件費の圧縮は痛みの伴うものでしたが、それによって2019年度は販管費が3180億円あったものを2020年度時点で324億円の削減に成功し、2739億円にまで圧縮しました。さらに、オンライン事業の成長がそれを支えていました。  昨年度のオンライン事業の売上高は315億円を達成し、今後はオンライン事業の売上高500億円を目指すなど、この先、収益の柱の1つに成長しそうです。そのほか、小売ビジネスモデルの革新を手掛けており、20年度に三越日本橋店新館6階、7階にオープンしたビックカメラの売上は堅調です。  三越伊勢丹の決算資料によれば、日本は総人口が減少する中でも、今後年収1,000万円超の人口は増加するといいます。同社はその層の取り込みに成功していたのです。他の百貨店についても、販管費を抑え、オンライン事業の育成やライブコマースの売上を伸ばすなどして各社様々な施策に取り組んでいます。今後、リベンジ消費がより活発化すれば回復の兆しが期待できる百貨店。意外と未来は明るいのです。

キーワードは「百貨店のステレオタイプ」の打破

 かつて、百貨店は時代のイノベーターでした。江戸時代の呉服屋は見本を持って得意先を回るか、商品を得意先に持ち込む形で売り上げを立てていました。当時の支払はお盆と年末の2回という売掛の方式であったことから、回収リスクや金利分を商品価格に反映されてしまい、消費者に届く値段が高くなっていました。そこで、越後屋(現在の三越)が「店前売り」「現金掛値なし」のビジネスモデルを導入したのが百貨店の始まりです。  その結果、よい商品が手頃な価格で消費者の手に届くようになり、大衆消費の花が開いたのです。  つまり、百貨店は時代の最先端を走っていたのです。今後も、百貨店が百貨店のステレオタイプなイメージを打破することができれば、どんなウィルスがやってきても、盤石な体勢をつくることができるでしょう。
馬渕磨理子

馬渕磨理子

<文/馬渕磨理子>
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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