更新日:2022年02月01日 16:21
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ドラマ『新聞記者』で『東京新聞』望月記者を“舞い上がらせた”私たちの責任

 2月3日号の『週刊文春』にて、とあるスクープが報じられた。Netflixで配信中のドラマ『新聞記者』が、明らかに森友学園の公文書改ざん事件を扱ったものであるにもかかわらず、制作陣は「全部フィクション」だと言い始めたのだ。  同事件を追い続け、赤木雅子さんとの共著『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』も出版した相澤冬樹氏がその経緯を語る。(以下相澤氏による寄稿)

正義の新聞、悪の週刊誌?

Netfrixのドラマ『新聞記者』のサイトより

Netfrixのドラマ『新聞記者』のサイトより

 Netfrixのドラマ『新聞記者』の河村光庸プロデューサーから、事前に作品を見られるURLが送られてきたのは、世界同時配信開始の6日前、今年1月7日のことでした。ですが、私は見ませんでした。今も見ていません。すでに前月、河村プロデューサーから直接、ドラマの内容について説明を受けていたからです。財務省改ざん事件で裁判を起こしている赤木雅子さんにも同じものが送られ一部を見たところ、つらくてすべては見られなかったそうです。  配信開始から1週間後、赤木雅子さんと私の共著『私は真実が知りたい』(文藝春秋)の担当編集者から連絡がありました。 「ドラマを見ましたか? 相当悪質ですよ!」
河村プロデューサーから仲介者を介して配信前に送られてきた、ドラマ「新聞記者」視聴用のリンクアドレス(一部加工)

河村プロデューサーから仲介者を介して配信前に送られてきた、ドラマ「新聞記者」視聴用のリンクアドレス(一部加工)

 普段は温厚な編集者が、かなり怒っています。赤木雅子さんは最初からドラマ制作に協力を拒んだわけではありません。その内容に納得していないことを知りながら、見切り発車のようにドラマが配信されたからです。どこが悪質なのかは現在発売中の『週刊文春』(2月3日号)の特集記事に記されていますが、実は記事に書かれていない怒りのツボがもう一つあります。『週刊文潮』です。  ドラマ『新聞記者』では、寺島しのぶさん演じる赤木雅子さんをモデルにした女性から、夫の残した遺書を託されてスクープするのは『東都新聞』となっています。寺島さんを追い回して困惑させるのは『週刊文潮』の記者。政権の意を受けて中傷記事を書くのは別の週刊誌だそうです。私はそれを見ていないのですが、文藝春秋社の編集部から聞いた話では「正義は新聞社、悪役は週刊誌」という位置づけです。  これは事実とは逆ですね。実際には、赤木雅子さんから託された「亡くなった夫の手記」を全文スクープしたのは『週刊文春』です。雅子さんを追い回して怖がらせたのは新聞、テレビ、雑誌を含むメディア各社。加計学園事件で政権の意を受けたとしか思えない記事を書いたのは新聞社です。  フィクションだから、事実を逆転させるのは制作者の「勝手」なのでしょう。しかし、よりによって悪役の週刊誌が『文潮』って……。明らかに実在する『週刊文春』と『週刊新潮』を揶揄するような名前をつけるのは、“事実”に敬意を払う気持ちがドラマの制作者にはないのでしょう。

『週刊文春』が急遽怒りの記事掲載

『週刊文春』(2月3日号)

『週刊文春』(2月3日号)

 実際にあったことを都合よく切り取り、都合よく加工して使うから、見る人の誤解を招く結果になる。それで責任を逃れようと「フィクション」で押し切るのはご都合主義です。そもそも本当に単なる“フィクション”なら、赤木雅子さんの了解を取りつけようとする必要はないはずです。  これには『週刊新潮』もカチンときたようで、東京新聞の記者に取材したドラマの批判記事をネットに出しています。  もちろん、おそらく事情を知らずに熱演した出演者の皆さんには何の罪もないと思います。ただ、『文潮』の件はまだいいとして、全体のストーリーも細部の描き方も「これは放置できません」と担当編集者が憤っていました。ですが私はその時、新著の執筆に追われていたほか、翌週の『週刊文春』に掲載する記事の締め切りも迫っていました。小学館のマンガ誌『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載の始まった赤木雅子さんがモデルの『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』を紹介するグラビア記事です。すると文藝春秋の担当編集者は……。 「相澤さんが今お忙しいのはよくわかっています。ですから記事は編集部で書きます。3人の担当記者を決めました。相澤さんはこの記者たちにご存じの話を伝えてください。次号の文春に記事を載せますので」 「次号の文春って、私が書くマンガの紹介記事と同じ号じゃないの。かぶせてくるの? 勘弁してよ」とはちょっと思いましたが、結局は自分の知っている事実を、赤木雅子さんから聞いている話も含めて伝えました。それを受けて文春選りすぐりの記者たちが関係者の取材に回り、記事掲載となりました。
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日本アカデミー賞を受賞した高揚感
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