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赤木雅子さんの願いが、佐川宣寿・元財務省理財局長の代理人に伝わった

―[取材は愛]―

佐川氏のほか、財務省職員5人を証人として申請

大阪地方裁判所

大阪地方裁判所

 ちょっとした一言で、心が通じ合うことがある。その実例を3月11日、大阪地裁で目の当たりにした。東日本大震災から11年の日だが、その話ではない。  主役は赤木雅子さん。財務省の公文書改ざん事件で亡くなった夫の赤木俊夫さんの真実を求め、国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手に裁判を起こして2年。国は“認諾”という聞き慣れない手続きを突然持ち出して裁判を無理やり終わらせたが、佐川氏との裁判は続いている。その裁判の非公開の協議がこの日大阪地裁で開かれ、原告の雅子さんと弁護団、それに被告・佐川氏の代理人弁護士らが出席した。  この日の協議で原告側は、佐川氏の責任を明らかにするため、佐川氏本人に加えて財務省の職員5人を証人として申請する考えを明らかにした。  まず、財務省理財局の総務課長だった中村稔氏(現駐英公使)と、理財局の国有財産審理室長だった田村嘉啓氏。この2人は当時財務本省で重要な職責にあり、理財局長だった佐川氏から直接指示を受け、改ざんの司令塔的な役割を果たしたと見られている。  赤木俊夫さんが改ざんに抵抗した際、この2人が近畿財務局の俊夫さんの上司に直接電話をかけ、改ざんに応じるよう迫ったことが、俊夫さんが死の間際に書き遺した「手記」に記されている。佐川氏からどういう指示があったのか明らかにするため、法廷での証言が欠かせない人物だ。

「悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員」

近畿財務局

近畿財務局

 次に、国有財産審理室の室長補佐だった杉田氏。下の名前はわかっていないが、本省から改ざんの指示を近畿財務局に伝えていたのは主に杉田氏だったと俊夫さんは記している。  いわば改ざんの担当窓口で、俊夫さんの「手記」では「悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員」と名指しされている。この杉田氏と、先の中村氏と田村氏、それに佐川氏は、「手記」でいずれも「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」として列挙されている。  最後に、近畿財務局で俊夫さんの直属の上司だった池田靖氏と、俊夫さんの部下だったT職員。池田氏は、最初に改ざんが行われた2017(平成29)年2月26日、休暇中だった俊夫さんをわざわざ電話で呼び出し、改ざんを実行させた当事者。本省からどのような指示が来て、それをなぜ俊夫さんに実行させることにしたのか。俊夫さんの心の重荷に直接関わっている人物だ。
問題の国有地に立つ完成間際の校舎

問題の国有地に立つ完成間際の校舎

 さらに池田氏は、問題の発端となった森友学園への国有地8億円値引き売却を行った担当者でもある。森友事件の核心である国有地値引きと公文書改ざんの両方を現場で知る唯一の人物だけに、証言はぜひとも必要だ。  一方、俊夫さんの部下だったT職員については、俊夫さんが部下には改ざんをさせずに自分で引き受けたことがわかっている。俊夫さんがどういう状況で改ざんを迫られたのかを間近で見ていたはずなので、その状況について証言を求めたい。協議では実名が明かされたが、改ざんには直接関与していないと思われるので、この記事では匿名とする。
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被告側代理人に、赤木雅子さんが伝えた言葉
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