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赤木雅子さんの願いが、佐川宣寿・元財務省理財局長の代理人に伝わった

被告側代理人に、赤木雅子さんが伝えた言葉

協議中の赤木雅子さんのメモ(一番下のT職員の名は消しています)(本人提供)

協議中の赤木雅子さんのメモ(本人提供。一番下のT職員の名前は消しています)

 正式な証人申請は、4月20日までに弁護団から書面で裁判所に提出したうえで、4月27日の非公開協議で改めて扱いを検討することになった。裁判所に認められれば、実際に法廷で証人尋問が行われることになる。  国が“認諾”によって逃れようとしたはずの証人尋問が、佐川氏の裁判で予想以上に早い展開を見せている。生越照幸弁護士は「証人尋問が認められれば勝ったようなもの」と語った。真相解明が目的であることを考えると、まさにその通りだ。  雅子さんは手ごたえを感じた。メモ帳に佐川氏と、証人申請する5人の名前を書き留めた。同時に、あることが心に浮かんだ。協議を終えて法廷から出てくると、外で待っていた私に告げた。 「あの人たち(被告側代理人)に……と言ってください」  雅子さんの話を私はとっさに理解できずにいた。すると法廷から佐川氏の代理人、菅弘一弁護士が出てきた。私より先に雅子さんは菅弁護士に近づき、自分で話しかけた。 「命日のお墓参り、無事終わりました。佐川さんにお伝えください」

初めての“人間らしい”やり取り

夫の命日に墓参する赤木雅子さん(3月7日、今野誠二郎氏撮影)

夫の命日に墓参する赤木雅子さん(3月7日、今野誠二郎氏撮影)

 俊夫さんの命日は、この4日前の3月7日だ。雅子さんは当日、俊夫さんのお墓参りを済ませていた。すると菅弁護士はまっすぐ雅子さんを見つめながら答えた。 「伝えます」  短いが、きっぱりした力強い口調だった。雅子さんはほっとした。 「はい、お願いします」  言い終えて会釈をすると、背後で成り行きを見つめていた私に向き直った。 「自分でできました」  私が「返事をしましたよ」と返すと、雅子さんは実感を込めて語った。 「あの人たち、気持ちがちゃんと持っておられるから」  佐川氏を訴えた雅子さんの言葉に、佐川氏の代理人弁護士が答えを返した。原告と被告ではなく、人と人として心が通じ合ったのだろう。
財務省に認諾の抗議に向かう赤木雅子さん(昨年12月17日)

認諾に抗議するため、財務省に向かう赤木雅子さん(昨年12月17日)

 これまで雅子さんは国の代理人からはぐらかされ、まともに取り合ってもらえず、あげくに“認諾”で裁判から逃げられた。訴えをことごとく“なかったこと”にされてきたようなものだ。佐川氏自身も法廷に一度も出てきたことがない。そんな中で初めて人間らしいやり取りができたように感じられた。
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佐川氏は赤木俊夫さんのお墓参りをする気はないか
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