更新日:2022年03月17日 17:26
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SMAPの昔の歌が、ウクライナ戦争で人気急上昇。今聴くべき名反戦歌の数々

ほとんどの人は戦争をしたくないけれど…

 当然、そこに反対すべき点はありません。おそらくほとんどの人は戦争をしたくないし、平和で幸せに暮らしたいし、暴力に訴えるより対話によって合意を見出すのが人類の理性であり良心であると信じている。筆者もその一人です。  けれども、このように戦争を遠くからながめて批判的でいられるのは、第二次大戦以降、いまのところ私達が幸いにも戦争の部外者であるからなのではないでしょうか? 考えたくもないことですが、万が一、今後当事者となってしまったとき、“人命は尊い”とか、“暴力では何も解決しない”との理念だけで、果たして耐えられるのだろうか?  このたび「Triangle」の道徳的なメッセージに共感が集まった事実は、現状の日本が比較的裕福であり、いくぶん平和であるという恵まれた特権的な立場にあることの裏返しでもあるのだと思います。戦争への時間的猶予と経済的余裕が保障する、条件付きの“反戦”なのですね。  問題は、今後起こりうる事態に、温室育ちのリベラリズムで耐えきれるのだろうか、という点です。

Dead Kennedysの痛烈な曲

 そこで思い出すのが、アメリカの伝説のパンクバンド、Dead Kennedys(デッド・ケネディーズ)の「Holiday In Cambodia」(1979年)という曲です。
「Holiday In Cambodia」

「Holiday In Cambodia」

 テレビや新聞のニュースなどで世界情勢を知った気になっている中流家庭の子供たちに、ポルポト支配下のカンボジアへ行ってみろとけしかける。大学でマルクス主義を学んだぐらいで革命家気取りになり、ジャズを聞きかじっては、スラム街に暮らす黒人たちの厳しい境遇に同情を示すぼんぼん連中。 「Holiday In Cambodia」は、そうした“リベラルアーツ”をクソミソにこき下ろすのですね。   <500ドルもするステレオシステムでエスニックジャズを流して   “俺ってイケてる”と悦に入っては   ひもじい思いをする黒人たちにこそ魂が宿るのだ   なんてもっともらしくホラを吹く> Playing ethnicky jazz to parade your snazz On your five-grand stereo Braggin’ that you know, how the niggers feel cold And the slums got so much soul <カンボジアの休日   ガチの貧民窟へようこそ ポルポト> A holiday in Cambodia where the slums got so much soul Pol Pot! (Lyrics by Jello Biafra 筆者訳)  ここまで極端ではなかったとしても、目の前でテロや戦争と向き合う人たちの訴える“NO WAR”と、“戦争はいけない”と説く道徳的な非戦との間には、決して小さくない隔たりがあるのだと思います。
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薬で死んだ兵士のリアル
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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