更新日:2022年03月28日 10:24
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ボートレース70年の歴史で‟有利なはずの女子レーサー”がSGを勝てなかった理由

SG優勝戦に乗った女子選手

 女子選手として初めてSG制覇に王手をかけたのは、寺田千恵選手だ。今から21年前の2001年、SGグランドチャンピオン決定戦で優勝戦に進出した。しかもボートレースでは断然有利とされる1号艇で……しかし、他艇の強烈な前付け牽制によってスタートの助走距離がなくなり、.33という遅れたスタートとなり5着に敗れてしまった。  次のチャンスは2006年の総理大臣杯(現・ボートレースクラシック)で横西奏恵選手が優勝戦に2号艇で進出した。しかし、このときも4号艇中澤和志選手のカドダッシュが決まり、スタートで屈する形になってしまった。  2011年には笹川賞(現・ボートレースオールスター)で再び横西奏恵選手が2号艇で優勝戦に進出。このときのスタートは決まり、差しに構えるも3号艇の仕掛けによって生まれた引き波に嵌り急失速で1マークは力のないターンとなり6着最下位に敗れてしまう。

軽い体重はスピード的に有利だが、波を食らうと不利にもなる諸刃の剣

 ボートレースでは女子レーサーに最低体重の優遇措置がある。現在は男子が52kg、女子が47kgが最低体重となっていて、それを下回ると重量調整用の重りをつけなくてはいけない。どんなモータースポーツでもそうだが、軽いほうがスピードが出るので有利になるわけだが、ことボートレースに限っては軽くて速くなる反面、不利になるケースもある。  ボートレースでは、いったん前に出た艇を抜くのは一般的に難しくなる。それは先行する艇がモーターから出す引き波を乗り越えていかねばならないからだ。引き波はモーターが水と空気を混ぜ込んでプロペラから蹴り出されることによって生まれる。引き波の上を走ると空気を含んでいるがゆえに、プロペラが水を充分にかき出すことができないばかりか、波立っているため艇が減速する要因となってしまう。  そんな引き波を切り裂いて乗り越えるためにはある程度重みが必要なのだが、体重が軽いと、引き波を切り裂けずに波に乗りあげながら進むことになる。そうなると艇は減速してしまうことになる。さきほどの2011年の笹川賞でも、横西選手は3号艇の太田和美選手に寄られて引き波を受けてしまったことがレースに大きく影響したのである。
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遠藤エミ選手は新しい戦い方を見せた
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公営競技ライター・Youtuber。近鉄ファンとして全国の遠征観戦費用を稼ぐため、全ての公営競技から勝負レースを絞り込むギャンブラーになる。近鉄球団消滅後、シグナルRightの名前で2010年、全公営競技を解説する生主として話題となり、現在もツイキャスやYoutubeなどで配信活動を継続中。競輪情報サイト「競輪展開予想シート」運営。また、ギャンブラーの視点でプロ野球を数で分析するのが趣味。
Twitter:@signalright

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