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世田谷通りに出現する“ナゾの巨大仏”。誰もが感じる違和感の正体とは

なぜ回転する?お寺の人に聞いた

 東京都心で、街中に大仏が屹立しているだけでもインパクトが大きいが、それがなぜ回転するのか、妙法寺の小林教正副住職に話を聞いた。 「まずこのお釈迦様は、背中に負う光背に、四体の菩薩像が表現されているのが特徴です。これは、仏さまの命と地球上のすべての生きとし生けるものの命が永遠であることを説いた、日蓮宗の重要な教えを表しています。地球上全ての生き物のことを説いているならば、お釈迦様に360度見回して人々を見守ってもらおうという発想から、回転する仏さまを作ることになったんです」  教義との繋がりもあっての回転だと言うことはわかった。それでも、今から約350年前の江戸時代初期に創建された、歴史深いお寺のやることとして、この突飛な発想に檀家などからどんな声が上がったのか気になるが、副住職によれば「反対意見はなく、建立は計画から順調に進みました」とのことで、周囲の懐の広さもあってのことのようだ。  さらに、どのようにして回転しているのかについても聞いた。 「動力は電気です。朝9時と夕方5時に回転するのですが、そのスイッチを押すということはなく、タイマーが作動して回転するようになっています。重さが8トンあるので、回転の速度はかなりゆっくりで1周5〜6分かかりますね」(副住職)

お参りすればこちらを向いてくれる

 回転することで、私たち衆生をあまねく見守ってくれる釈迦如来像だが、参拝に行く時間に気をつけていないと「せっかくお参りに行ったのに、そっぽを向かれている」なんてことも起こり得る。  しかしそれは「仏さまの前にセンサーが付いていて、目の前に参拝者がくるとゆっくりそちらの方に向き直ってくれるようになっています」と、副住職は対策済みであることを教えてくれた。  いつも通り過ぎてしまっていた通勤通学の見慣れた風景。たまにはあえて足を止めてみると、面白い発見があるものだ。ここ数ヶ月、海外から悲惨な戦争のニュースが毎日のように届く。このおおくら大仏が祈念しているのは交通安全と「世界平和」であることも書き添えておく。

人が近づくと、センサーでこちらを向いてくる

大仏から見た世田谷通りの風景

取材・文・撮影/Mr.tsubaking
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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