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吉岡里帆が語る「社会の問題をエンタメという形で伝える意義」とは

『ハケンアニメ!』に対する思い

DMA-RY_001──では、映画『ハケンアニメ!』に対しては、どんな思いで臨んだのでしょうか。 吉岡 この作品の原作は辻村深月さんの小説です。辻村さんのアニメーターたちに対する熱い思いと、普段見られることの少ない「裏側」を描き切る愛が詰まった作品なので、まずはその魅力を届けなければいけないという根本の使命があります。 アニメが好きな方も、そんなに見ないという方にとっても「アニメを作っている人たちってなんてかっこいいんだ!」という胸が熱くなる瞬間。それがこの映画にとっては大切な部分です。エンタメとしての盛り上がりも大事な作品ですが、人の内面の細かな心の動きもしっかりと描いて表現しなければいけないと、役をいただいたときに感じました。 人が成長する過程とその結末のカタルシス。その瞬間をどう作っていくか、台本を見ながらずっと考えていました。

ひとつのセリフとその圧で刺しにくる

DMA-RY_019──『ハケンアニメ!』の中ではライバル関係にある、王子監督役の中村倫也さんの演技に影響を受けた部分はありますか。 吉岡 中村さんって本当に掴みどころのない面白い方で、そこが王子というキャラクターとすごくマッチしていて驚かされました。中村さんが王子という存在そのものに見えるので、こちら側もその力に引っ張られて演技に集中できたところがありました。 ──ライバル関係ながら、共演シーン自体はそこまで多くなかったですよね。 吉岡 確かにそうですね。ただ2021年に、劇団☆新感線『狐晴明九尾狩(きつねせいめいきゅうびがり)』という舞台で共演したときにハッとさせられたことがあったんです。 舞台でも映像でも、細かく心を重ねて表現することはとても大切だけど、たったひとつのセリフやその圧力で「刺しに行く」という感覚での言葉の発し方が、すごく威力を持つことがあるんだ、ということをおっしゃっていて。舞台役者さんだからこその言葉ですよね。 「届ける力」を1回のセリフにガッと集中させるというのは、『ハケンアニメ!』での王子のセリフを完パケで聞いたときに納得させられました。見ていてグンッと引っ張られる感じ。こういうことかあって、映画が完成してから気づかされたんです。 ──それは、見ている人だけでなく共演者同士で「刺し合う」こともあるんでしょうか。 吉岡 あると思います、お互いに第六感で。瞳と王子はお互いに探りながら様子を見合っている役ですが、演技で試みていることと役柄がリンクすることもあるんだと感じました。
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