恋愛・結婚

「なんで俺の面倒を見てくれないの」妻を母親代わりにしてしまう男たちの”甘え”の正体

自分で自分を「あやせない」大人たち

 さて、モラハラやDVの加害者、あるいは不機嫌によって人をコントロールする「フキハラ」などとも最近言われる人たちの様々なケースは、驚くほどこの赤ちゃんと共通点があります。  ひとつケースを紹介します。ある男性がパートナーと美術館に行った時に、パートナーの方がどんどん先に進んでしまって、美術館の中で完全に別行動になるということがありました。  男性はそれに対して「一緒に来ているのにどんどん勝手に進んで腹立たしい」と思い、直接はそう言わないものの露骨に不機嫌になります。  パートナーはその雰囲気を感じて「どうしたの?」「今日の美術館よかったね。あなたはどれが好きだった?」など機嫌を取るように話すものの、ずっと押し黙る男性に押される形で黙り込んでしまい……。    最終的には予約していたディナーもキャンセルし、家に帰ったらドアを強く締めるなどの形で不機嫌を示し、無言でさっさと寝室に入って寝てしまった……。楽しく過ごせるはずだった週末はお通夜のような雰囲気になりました。

相手に忖度させて機嫌を取るのは赤ちゃんがすること

 このケースを見て、ああ自分もやったことがあるとか、されたことがあると感じる人は少なくないのではないでしょうか。こういうケースに触れないで生きてこられた人がいたら、いいなあ、と率直に思います。  僕自身もこういう加害行為をしたことがあります。生まれ育った家庭で、このような加害が起きることもありました。  さて、改めて赤ちゃんのケースを振り返ります。赤ちゃんは「自分のニーズもわからないし、それを伝える力もないし、自分でケアする力もない」存在です。  今回のケースでの男性を見てみるとどうでしょう。本人のニーズは本人でも気づいていないか、あるいは口に出すのが恥ずかしいのかもしれませんが「コメントや感想を言いながら、パートナーと作品を見て歩きたかった」です。  パートナーは後から感想を述べたりしていることから、おそらくは一緒に歩かなくても、後で「どれがよかったよね〜」と話したい人、あるいはどちらでもokな人だったことが予想されます。  しかし、この男性は相手に自分のニーズを伝えていません。伝えていないにも関わらず、それを相手がケアしないこと、ニーズを満たさないことに「腹立たしい」と感じてさえいます。被害者意識もあるでしょう。  もしかしたら「一緒に歩いて見たいんだけどいいかな?」と言えば一緒に歩けたかもしれません。その日は楽しい時間になったかもしれません。  あるいは「自分のペースでみたいから、後でゆっくり話そう」と返されるかもしれませんが、それはそれです。少なくとも「そのくらい言わなくてもわかるだろう」というような甘えによる被害者意識で腹を立てたり、不機嫌になることはできません。
次のページ
性格ではなく能力の問題
1
2
3
DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

孤独になることば、人と生きることば孤独になることば、人と生きることば

モラハラ、パワハラ、DV
人間関係は“ことば”で決まる


記事一覧へ
おすすめ記事