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川崎幼稚園、園児死亡事件における「ヘラヘラ」会見。謎の笑顔の理由を解明する

謎の笑顔の正体は「恥」と「混乱」

 そして火に油を注ぐのが、会見終盤。 「ぜひ皆様方のご協力によりまして良い園を、あるいは僕がいなくなったらさらに良くなるように……」と話したところで、「園を続けるかは決まっていません」と弁護士から指摘を受け、「あ、そっか、廃園になるかもしれないね」と、園長は、目じりにしわを寄せ、満面の笑みで発言します。  私たちは、ミスを笑ってごまかすことがあります。しかし、こうした笑顔は意識していれば、抑制することが出来ます。園長の場合、先の心情がベースにあったことから、緊張感が欠如し、こうした日常的なコミュニケーションの慣性が漏洩したのだと考えられます。  会見の中心的な役割を果たしていた副園長。園長に比べ、彼女の笑みの方が目立ちました。記者の質問に答える際、軽い笑みを浮かべ返答し、会見の随所で起こる記者とのミスコミュニケーション(発話の訂正や聞き間違え、返答ミス、言うべきではない発言の漏洩等)時に噴き出すような笑いを見せます。注意深く観察していればわかりますが、副園長の顔から笑顔がこぼれるのは、副園長が一方的に話す場面ではなく、双方向のコミュニケーション時です。

副園長の表情にもミスを笑って緩和させるクセが散見

 一方で、被害園児について話を振られると、眉の内側を引き上げ、悲しみや罪悪感表情を浮かべ、言葉を詰まらせる場面も見受けられます。  おそらく、副園長は、普段、人と会話するときは笑みを浮かべ、コミュニケーション中に起こるミスを笑って緩和させるというクセを持っているのだと推測されます。  副園長の場合、事件発生を受け、さらに会見という不慣れな場において、緊張・混乱し、どのようなコミュニケーションをしたらよいかわからなくなり、日常のコミュニケーションのクセが優位に表れたものと考えられます。  本会見において、園長・副園長が誤解を招く態度をとっていたことは間違いありません。しかし、笑顔一つとって、極悪人と決めつけるのも間違っています。人の心理の複雑さを見つめ、冷静に問題を捉える姿勢が大切だと思います。事件の全容は、捜査のメスが入り、これからさらに明らかになることでしょう。本件を教訓に、さらに安心・安全な幼稚園・保育園運営がなされることを願っています。 文/清水建二
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役、防衛省研修講師、特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。著書に『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社、『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社などがある。
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