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“0文字で早押し”の謎に迫る前代未聞の小説。著者・小川哲は「クイズには全く強くない」

クイズにはスポーツならではの醍醐味もある

小川哲

小説家・小川哲氏

テレビでクイズ番組を見ない日はない。ブームが続くなか、『嘘と正典』が直木賞候補になった小説界の俊英・小川哲が前代未聞のクイズ小説を刊行した。 「ずっとスポーツ小説が書きたかったんです。でも言葉だけでスポーツの魅力を表現するのは難しい。いろいろな可能性を探った結果、競技クイズにたどり着きました。 問題文も答えも言葉でできているから小説に移し替えても違和感はないし、早押しという身体性を伴う部分もあります。 例えば、驚異的な早押しの裏でどんなことを考えているのか、そのためにどんなトレーニングをしているのかなど。クイズにはスポーツならではの醍醐味もあるんです」

なぜ0文字で押せた?クイズ王の謎に迫る

テレビ局主催のクイズ大会決勝の最終問題で、東大生の本庄は1文字も問題文が読まれる前に早押しボタンを押して正答する。対戦相手だった三島は、本庄について調べ始め、「なぜ0文字でボタンを押せたのか?」という謎に迫っていく──。 「当初は別の物語を考えていました。クイズに出そうな形式的な知識を増やすかわりに、初恋など人生の記憶を“クイズに出ない”という理由でどんどん忘れていく主人公の物語です。 しかし、一流のクイズプレイヤーたちに取材すると、それは浅はかな着想だったと気づかされましたね。それでクイズと人生にまつわる、今の物語になりました。 残念ながら現実の僕は、クイズには全く強くありません(笑)。でも、小説のなかでなら、想像力次第で一流のクイズプレイヤーになれるんです」
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クイズに正解できる理由は人生のどこかでその人が、正解と出合っていたから
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