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直木賞作家・朝井リョウが作家10周年記念で「性欲」をテーマにした理由

※紙面では著者確認前の原稿を掲載してしまいました。著者確認後の記事をwebで全文公開いたします。  早稲田大学在学中の20歳の時に『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー、23歳の時に『何者』でエンタメ界の最高賞・直木賞を戦後最年少受賞した、朝井リョウ。この春、小説としては17冊目となる長編『正欲』を発表した。 <日本で、男で、五体満足な異性愛者に生まれる。これで、社会に蔓延る理不尽から、九割は免れることができる>(本文より)。 朝井リョウ 巻末には「本書は作家生活十周年記念の書下ろし作品です」とあるが、アニバーサリーイヤーはとうに過ぎている。それを承知しながらも特別な看板を掲げたのは、本書がこれからの10年を切り開く「新境地」であり、「新たな代表作」である宣言だ。

人の性欲についてちゃんと書きたいと思っていた

――発明的なタイトルですね。「性欲」が「正」の字に変わっていることで、さまざまなイメージが喚起されます。この作品内容ならばこれしかない、という感じでしたか? 朝井:人の性欲についてちゃんと書きたいなと5年前くらいから考えていました。少しずつ取材も進めていってはみたものの、具体的にどう書くかで悩んだ時期は長かったんですが、タイトルを決めたのはかなり早い段階でした。「せいよく」という4文字は、音として強いじゃないですか。  もちろんそれは性欲という単語がイメージされるからなんですが、音の強さはそのまま使いつつ別の言葉を当てられないかなと考えた時に、割とすんなり「正」に辿り着きました。「性」は淫靡で個人的なものというイメージですが、「正」は全員に関わるものだし基本的に光の中にあるイメージなので、ギャップがあるのもいいな、と。ネットで検索したら、他に日本の小説でこのタイトルはなかったのでホッとしました。

イロモノ扱いされるのは寂しい

――章ごとに視点人物が変わる、群像形式が採用されています。’19年の夏にある「事件」が起こることが、小説の冒頭で早々と明かされる。その事件に直接的・間接的に関わる人々の人生が描き出されていくのですが……「事件」の中途半端な紹介はしないほうが良さそうですよね。 朝井:そうしていただけると嬉しいです。具体的な内容が先走ってイロモノ扱いされてしまうのも寂しいというか、「ニッチな物珍しいものを書きました」みたいな見え方になるのは避けたいんですよね。だから今回、本のあらすじとして公にしている情報も、極力減らしています。
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少数派の人たちを書いたという感覚はない
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